2014 Fiscal Year Annual Research Report
ムコ多糖症に対する細胞医薬品の開発にむけた基礎研究
Project/Area Number |
25293229
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松山 晃文 大阪大学, 臨床医工学融合研究教育センター, 招へい教授 (10423170)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 脂肪組織由来多系統前駆細胞 / ムコ多糖症 / in situ reprogramming |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-Derived Multi-lineage Progenitor Cells; ADMPC)は、未分化マーカである核内転写因子GATA-4やIsl-1が発現、多系統分化能を有するという細胞特性をもつ。 われわれは、ADMPCが肝臓内に投与すると肝細胞様に分化生着し、高脂血症のモデル動物である渡辺遺伝性高脂血症ウサギのコレステロール値を低下させることを見出し、報告してきた。この知見をうけ、本研究では、酵素(βガラクトシダーゼ)が完全欠損しているGM1-gangliosidosisモデルマウスに健常マウス由来ADMPCを投与し、血中酵素活性を測定するとの試験系を採用した。肝臓内に投与したADMPCが肝細胞様に分化生着し、健常マウス由来ADMPCが生着してβガラクトシダーゼを分泌していた。これら、Stem cell(ADMPC)が肝臓内で肝細胞へと分化誘導されているとの知見から、”in situ reprogramming”との概念を提唱した。Terminal differentiated cellをin vitroにて多能性幹細胞化する”reprogramming”、遺伝子導入等でin vitroにて直接目的細胞へと分化させる”direct reprogramming”に加えて新しい概念であり、治療へはin situ stem cell therapyとして展開することとなる。 一方で、GM1-gangliosidosisモデルマウスホモ接合体へADMPCを投与した群では、非投与群に比較して血中βガラクトシダーゼ活性の上昇を確認したものの、ヘテロ接合体に比較しても低値である。ヘテロ接合体は無症状であることから、治療効果が期待できると想定しているが、頻回投与など投与プロトコールの検討が必要かもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADMPCの投与により、ムコ多糖症の代表例としてのGM1-gangliosidosisモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)の血中βガラクトシダーゼ活性が改善した。ADMPCがムコ多糖症に対する再生医療等製品(細胞製剤)として研究開発を進めることに合理的根拠を示しえた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) GM1-ガングリオシドを細胞から引き抜く薬剤のスクリーニング GM1-ガングリオシドの蓄積が当該疾患の病態である。GM1-ガングリオシドは、1990年代に偽ランバレー症候群の治療薬として治験が開始されたものの、運動障害が有害事象として発生し、薬剤としての開発が中止されたという経緯がある(Lancet 1993)。GM1-ガングリオシドーシスの治療において、cell based-enzyme deliveryのみでは十分に治療効果を得られないと推定される。GM1-ガングリオシドは末梢の細胞のみならず、赤血球上にも分布している。GM1-ガングリオシドはシアル酸の結合した糖脂質であるため、細胞膜間のfloppingによる平衡状態にある。末梢細胞でのGM1-ガングリオシドの生成を抑えることが、cell based-enzyme deliveryのMOAであり、赤血球からのGM1-ガングリオシドの引き抜きと、それに続く腎排泄が可能な薬剤であれば、治療効果の向上が期待される。GM1-ガングリオシドの糖脂質として性質から、シクロデキストリンあるいは微小リン脂質particleなど想定薬剤から、GM1-ガングリオシドをcaptureする薬剤のスクリーニングを行い、2)に展開する。
2) 再生肝細胞分泌ライソゾーム内加水分解酵素の肝外組織への供給と効果増強の検証 複数ストレインのライソゾーム病モデルマウスを用い、ADMPC由来再生肝細胞が産生した責任酵素(欠損酵素)が他組織細胞に供給され治療効果を期待しうることを確認した。しかしながら、既に既に蓄積したGM1-ガングリオシドを低減させるには不純分と推察される。GM1-ガングリオシドを細胞から引き抜く薬剤等の検討を行い、細胞治療と併用療法(in situ stem cell therapy in combination with drug)の可能性を検討する。
|