2013 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸転移酵素AGXT2に注目した精神障害の解析研究
Project/Area Number |
25293251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
上野 修一 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80232768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 賢郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (80444735)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AGXT2 / 中枢神経系 / 定量的RT-PCR / 機能性多型 / 一塩基多型 / アミノイソ酪酸 |
Research Abstract |
まず、alanine:glyoxylate aminotransferase 2(AGXT2)の脳内分布を調べるために、ラットを用い、AGXT2遺伝子mRNAの脳内分布を調べた。ラットの脳組織(大脳皮質、大脳白質、線条体、視床、中脳、橋、小脳)よりRNA分画を精製しcDNAを作成する。そのあと、AGXT2遺伝子mRNAに特異的Taqman probeを用い定量的real-time PCR法を行い、各組織でのAGXT2mRNA定量を行った。内部標準としてGAPDH遺伝子を用いた。その結果、ラットのすべての脳組織でAGXT2遺伝子が発現していることが確認され、有意ではないが、大脳皮質や海馬に発現が多かった。AGXT2遺伝子には、機能性多型があり、日本人の約3割がこの酵素活性を欠損していることがわかっている。AGXT2活性の欠損するものでは、尿中のアミノイソ酪酸量が増加することから、AGXT2遺伝子の機能性多型を調べるため、5名の日本人のすべてのエクソンを含む領域の遺伝子配列を決定し、尿中アミノイソ酪酸との関連を調べた。3つのAGXT2遺伝子の一塩基多型と尿中アミノイソ酪酸量と関連することを確認した後、健常日本人85名の尿中アミノイソ酪酸量を定量し、確認した。その結果、既に報告のある3番エクソンにあるrs37370および4番エクソンにあるrs37369の他に、6番エクソンにあるrs180749の一塩基多型も関係していることがわかった。これらの多型はすべて連鎖平衡の位置にあるため、異なった創始者効果を持っていると考えられた。また、これら3つの一塩基多型以外にAGXT2活性に影響を与える多型は存在しないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中枢神経系でAGXT2遺伝子の役割を調べる目的で研究しており、平成25年度に予定した中枢神経系での遺伝子mRNA発現調べ、すべての脳組織で発現していることを確認した。そして、日本人では、AGXT2遺伝子の遺伝子産物であるアミノ基転移酵素活性を欠失しているものが存在することから、酵素活性を欠損する機能性多型を調べ、3つの一塩基多型が酵素活性に関係していることを明らかにでした。以上から研究内容を予定通り達成できている。これから、中枢神経でのより詳細な遺伝子発現解析および精神神経疾患との関連を解析する予定であり、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
AGXT2遺伝子産物であるアミノ基転移酵素AGXT2は、チミンの分解中間産物であるD体のアミノイソ酪酸を唯一分解する酵素であるが、最近になり、非対称性ジメチルアルギニンなど一酸化窒素合成酵素を競合阻害する物質の分解にも関わることが報告された。また、今回の研究から、脳内にはAGXT2が存在していることが確認されたことから、中枢神経系でも重要な役割を持っていることが想定される。AGXT2活性には人種差があり、たとえば、白人では5%程度の割合で本酵素活性を欠損しているが、約3割の日本人が活性を欠損していることがわかっている。以上から、日本人での精神神経疾患との関連が予想されると思われ、興味深い。平成25年度の研究で、AGXT2活性欠損に関わる日本人の一塩基多型を3つ確認しているので、これらの機能性多型を用いて、精神神経疾患の疾患-対照遺伝子関連解析を行うことにより、AGXT2遺伝子との関連が明らかにできる可能性がある。まず、統合失調症やうつ病、アルツハイマー病、脳血管障害など一酸化窒素が関連する疾患と解析を行う予定である。
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