2014 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジー制御に基づく癌微小環境因子解明と新規DDSを用いた難治癌治療開発
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25293287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永井 英司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前山 良 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10611668)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 助教 (20452708)
仲田 興平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (30419569)
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40507795)
当間 宏樹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80437780)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 癌微小環境 / 膵臓癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
線維芽細胞、細胞外マトリックスから構成される癌微小環境は癌の浸潤、転移、薬剤治療抵抗性に重要な役割を果たしている。我々は、この癌微小環境における重要因子である膵星細胞が細胞外マトリックスを分泌する事に注目し、膵星細胞の活性化を制御することによって薬剤到達性が改善し膵癌の浸潤・転移を抑制できると考えた。本研究は、膵星細胞を含む癌微小環境の制御を、オートファジー制御という新たな手法を用いて目指すものである。 膵癌切除組織の連続切片を用いて、オートファジーのマーカーとして広く使用されているLC-3、活性化膵星細胞のマーカーであるα-SMAで免疫組織染色を行った。αSMA陽性の活性化膵星細胞の5~30%ほどで、細胞質でLC3に染まる細胞が確認され、ヒト膵癌組織の膵星細胞でオートファジーが亢進しており、治療ターゲットになりうることが示唆された。昨年度は、膵星細胞と膵癌細胞との共培養モデルにおいて、膵癌細胞単培養時よりも膵星細胞との共培養時において膵癌細胞の浸潤能が増強する事を確認し、さらにオートファジーインヒビターである3-MAを添加することで、膵癌細胞の浸潤が抑制される事を確認した。しかし、膵癌単独培養時での3-MAの癌細胞への影響を検討したところ、浸潤能の低下を認めた。このため、その他のオートファジーインヒビターを検索し、膵癌細胞より膵星細胞でより低用量でより早期にオートファジーを抑制することが確認されたクロロキンを使用した。クロロキンは膵星細胞の増殖を抑制し、膵癌細胞との共培養モデルにおいて、膵星細胞との共培養による膵癌細胞の浸潤能・遊走能増強を減弱した。さらにオートファジー関連遺伝子であるAtg5やAtg7を抑制した膵星細胞を作製したところ、クロロキンと同様に、膵星細胞の増殖能の低下を示し、また膵星細胞との共培養による膵癌細胞の浸潤能・遊走能増強を減弱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵星細胞の樹立は確立・継続している。クロロキンによる膵星細胞のオートファジー抑制は、膵星細胞の増殖を抑制するだけでなく、共培養モデルにおける膵癌細胞の浸潤能・遊走能の増強を減弱した。またオートファジー必須遺伝子であるAtg5,Atg7をノックダウンした膵星細胞でも、クロロキンと同様の結果を確認できたため、本研究の進捗としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌切除組織の連続切片を用いた、LC3およびαSMAの染色で、腫瘍中心部・腫瘍辺縁部・正常部それぞれの間質におけるオートファジーを検討する。この免疫組織染色を用いて、予後との相関を検討する。 さらにマウスの膵への同所移植モデルを用いて、癌細胞単独,癌細胞と活性化膵星細胞との共移植,癌細胞とオートファジー抑制膵星細胞の共移植を比較して、in vivoでのオートファジー活性と浸潤・増殖・転移能の関係を評価する。現在ルシフェラーゼを導入した膵癌細胞株、不死化した膵星細胞を作成済であり、不死化した膵星細胞からshRNAを用いて、安定してAtg7を抑制した膵星細胞も作成済である。これらの細胞を同所移植し、マウスにルシフェリンを投与することで、マウスが生存した状態での生体発光で癌の増大や遠隔転移・播種を評価することができる基礎的な検討も行っており、今後本実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬類、抗体、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現、実験用マウス、実験用ガラス器具、人件費、研究成果発表費、論文投稿料
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Research Products
(5 results)