2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25293349
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
湯本 英二 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (40116992)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 筋衛星細胞 / 喉頭麻痺 / 脱神経 / 神経再建支配 / 神経筋弁移植術 / 三次元CT / ヒアルロン酸 / 喉頭筋電図 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱神経後および脱神経後直ちに神経再建を行った後の筋衛星細胞の動態に関する検討を詳細に行った。脱神経は筋衛星細胞の活性を上昇させるが、MyoDの活性が3週以後低下した。しかし5週後でもSham群よりは高いレベルにあった。神経再建群では直後に筋衛星細胞の活性が上昇するものの3週以後はSham群と同等な程度まで低下した。これらの結果から、脱神経後の筋衛星細胞活性の上昇は正常の筋肉組織を維持するには十分でないと考えられた。MyoD活性の上昇を起こすとされているIGF-1投与などの介入的処置によって筋衛星細胞の活性上昇を維持亢進することで脱神経後の筋肉組織の維持、神経再建後の筋萎縮の正常レベルまでの早期回復に有用な可能性が示唆された。小動物(ラット)を実験に用いるので当初に計画したヒアルロン酸の定量法(声帯固有層、靭帯、筋層を顕微鏡下に分離してから含有量を定量化する)を用いることができなかったため、平成26年度はAlcian blue染色を施した標本を定性的に観察したが、標本ごとの染色強度のばらつきが大きかったので一定した結果を得ることができなかった。そこで、Lebl, et al. Laryngoscope 117:595-599, 2007が報告した方法に準拠してヒアルロン酸定量を試みる予定である。 昨年に引き続いて声帯麻痺患者と神経筋弁移植術後2年を経過した症例を対象に三次元CT検査を行った。術後患者は定期的にストロボスコピーと発声機能検査を行い、術後のCT検査を行った後、任意で筋電図検査を行った。手術前後に筋電図検査を行えた12名では発声時にみられる甲状披裂筋のリクルートメントが有意に改善した。三次元CT検査でみた発声時声帯の厚みも術後に有意に改善した。これらの結果から神経筋弁移植術によって甲状披裂筋の神経再支配が促進されることが分かった。この結果をまとめて英文誌に投稿しAcceptされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究: 脱神経および脱神経後即時神経再建が甲状披裂筋の筋衛星細胞の活性に及ぼす影響についてはその結果をまとめて英文誌(Laryngoscope)に投稿しAcceptされた。現在出版待ちの状態である。声帯粘膜固有層に分布するヒアルロン酸の定量に関する検討は研究実績の概要欄で記載したように当初の計画を修正することを検討している。 臨床研究: 平成25年度から行ってきた一側喉頭麻痺患者における発声時健側声帯過内転に関する検討の結果、健側声帯過内転は発声機能を代償するものではないことを明らかにした。この結果をまとめて英文誌(Acta Otolaryngol)に投稿し出版された。一側喉頭麻痺患者に対して行った神経筋弁移植術の術後2年経過後では発声時にみられる甲状披裂筋のリクルートメントが有意に改善し発声機能の改善につながった。神経筋弁移植術を披裂軟骨内転術と併用することの臨床的意義を示すことができた。この結果を英文誌(Otolaryngol Head and Neck Surg)に投稿しAcceptされた。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究では、脱神経および脱神経後即時神経再建に伴う声帯粘膜固有層の細胞外成分、とくに声帯の物性に影響するヒアルロン酸の変化を検討する。声帯粘膜固有層浅層内に分布するヒアルロン酸の定量が可能になればその技術を用いて瘢痕声帯の作製とその治療効果判定にも応用できる。 臨床研究では、さらに症例の集積を進める。特発性喉頭麻痺例を対象に行った嚥下造影検査では麻痺側梨状陥凹の残留量が健側よりも有意に多いことから、特発性喉頭麻痺例の神経傷害部位は反回神経単独よりも広範であると予想される。両側同時に甲状披裂筋と輪状甲状筋の筋電図検査が可能になったので来年度は特発性喉頭麻痺患者の障害部位を筋電図学的に検討する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定した研究費は予定通り使用した。平成25年度から繰り越した研究費についても一部を使用したが、声帯粘膜固有層細胞外物質(ヒアルロン酸)の検討については定性的に観察したのみなので定量に必要な抗体や試薬を購入しなかった。また、Nimodipine含有飼料を用いなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は神経再建+薬剤(Nimodipine)投与群を作製し、脱神経群、神経再建群と神経再建+薬剤(Nimodipine)投与群の長期経過した動物を評価するために平成26年度から持ち越した研究費を使用する予定である。
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