2014 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼比較民俗調査を通じた国際的博物館・大学連携研究のモデル構築
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25300006
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
用田 政晴 滋賀県立琵琶湖博物館, 上席総括学芸員 (00359259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楊 平 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (50470183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 博物館 / 湖沼 / 民俗 / 国際研究者交流 / 中国 / 国際展示 / 国際講演会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、琵琶湖と中国の太湖・洞庭湖における稲作と淡水漁労など水辺環境の民俗事例を対象に、比較民俗調査を中国湖南省博物館や河海大学などと協働で行い、①国際的な博物館・大学連携による人文科学研究のモデル事例を確立する。②稲作発祥の地である長江中流域の洞庭湖を起点に、下流の太湖も含めて稲作と不可分に結びついた淡水定置網漁のエリ、水上居住民の家船分布を航空写真から探査して分布平面図を記録化する研究法の開発を行い、容易に現地調査を行えない海外など遠隔地等における予備的民俗調査法の確立を図る。③同じ東アジア地域にある長江流域の洞庭湖・太湖などと琵琶湖の資料による稲作および淡水漁労の比較調査の成果は、博物館学的な意義も含めて、企画展示および国際連携講演会として公表し、国を超えた博物館提携・協定が、研究調査・展示公開という実質的なものを伴うものとして確立することを目的としている。 今年度は、②の洞庭湖および太湖のエリ、家船およびそれらに付随する水辺環境の総括的な情報を図化してとりまとめ、収集した実物の民具資料・地図・写真情報などの関係資料をデータベース化するなど整理を行った。 そして2年間の研究事業の中間報告として、③にあるような総括的・網羅的な洞庭湖・太湖と琵琶湖との湖沼環境、特に稲作と淡水漁労に主眼をおいた比較民俗調査結果の実例を琵琶湖博物館が湖南省博物館および河海大学の協力のもと企画展示『魚米之郷-太湖・洞庭湖と琵琶湖の水辺の暮らし-』と題して、琵琶湖博物館企画展示室において開催した。あわせて研究成果をわかりやすくまとめた展示解説書を日中両国語でまとめて公表した。 企画展示終了後は、その成果発表講演会及びシンポジウムを中国・河海大学で開催して、日本側からの基調講演をもとにして、日中の研究者のみならず大学院生・学生も含めた研究交流と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
太湖・洞庭湖周辺の家船集中地域及び伝統的定置網漁であるエリの分布図については、図化作業を行い、成果公表の場である企画展示資料としてパネル加工した後、展示解説書の図録にも反映した。こうしてこれまでの研究成果を参画研究者全員参加のもとでわかりやすくとりまとめ、日中の博物館・大学など公的機関や研究機関を中心に配布した。また、この企画展示は、115日間にわたって開催して37,227人の来館者を迎えた。この事業にあたっては、中国湖南省博物館や河海大学、中国科学院湖沼地理研究所、中国駐大阪総領事館などの全面的な協力が得られたところでもある。 会期中は、中国研究者を迎えて中国の湖沼料理なども交えた新しいタイプの講演会を開催し、フロアートークも20回以上開催するなど成果公表に努めた。また、終了後も、これらの成果を踏まえて中国河海大学において日中共同講演会およびシンポジウムを開催し、研究交流と成果公表を図った。 このように、日中の博物館・大学・研究所・政府関係機関が共同で、研究成果を展示や講演会の形で日中双方において開催し、印刷物の刊行と配布もできたことは、本研究の当初の目的が達せられたと言っても過言ではない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの琵琶湖と太湖・洞庭湖など日中の湖沼研究を通じた研究交流史をふまえて、博物館同士、あるいは研究機関同士の協働関係の記録にも重点を置きながら、当該年度までの本研究の成果を琵琶湖博物館研究調査報告書としてとりまとめ、東アジア関係研究機関や図書館など公共施設に配布するなどその幅広い成果公表に努める。 その後は、洞庭湖と太湖の、この5年間の水辺環境変化を記録し、琵琶湖がたどってきた近代化との類似性や違いを明らかにし、そこにどのような水辺に対する思想・論理の違いがあったかを、日中の博物館に大学を加えて議論・検討する。 一方で、新しい航空写真による地図資料の作成法のみならず、博物館連携・協定に向けた博物館同士の関係史をまとめ、国際的な新しい博物館の在り方への新しいモデル構築を行う。 こうした作業による事実関係をもとに、抽象化・理論化を目指し、博物館学的な課題として論文化を目指す。一方、最終年度にはこうした新しい博物館関係の在り方を提示する講演会を開催して、国境を挟んだ政治事情など周辺状況に左右されない普遍的な機関同士の関係を築くことのできる先駆的な事例として確固たるものにしていく。
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Research Products
(13 results)