2014 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア火山災害地の復興型資源利用にみる自然と社会の復元力に関する研究
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25300014
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
二宮 生夫 愛媛大学, 農学部, 教授 (80172732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 昌広 高知大学, 自然科学系, 教授 (80390706)
嶋村 鉄也 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80447987)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害復興 / 一次遷移 / プカランガン / 外来種 / レジリエンス / インドネシア / ムラピ山 |
Outline of Annual Research Achievements |
ムラピ山域では火砕流・土石流などの影響によって多くの植生が被害を受けた。壊滅的な被害を受けた場所では、水が溜まりやすい窪地などにエレファントグラスなどの多年生の草本が繁茂しはじめていた。また、噴火によって地上部の植生が失われた場所では、外来種であるアカシアやセンゴンなどが更新して純林を構成していた。これらの外来種2種は成長が早く、2006年の噴火で植生が破壊された場所においても優占していたことが報告されている。また、センゴンは、政府によって被災地の住民に苗が配られ植栽が推進された樹種である。これら外来種は全てマメ科の窒素固定を行う早生樹種であり、被災地における植生の初期回復過程の中心的な役割を果たしていた。 多くの被災世帯は被災後には牧畜や、サンドマイニングの活動などを大きな収入源とするようになった。土石流によって被災した土地では、数メートルの土砂が堆積する。ムラピにおけるこの土砂は地元では質がよいとされ、一日に700台を超えるトラックが来て砂を購入していく。トラック一台分(6~8m3)当たり、15万ルピア(1300円程度)で取引されていた。このうち、2万ルピアが土地所有者へと払われ、残りが土砂を積み込む労働者に支払われる。この土砂を積み込む労働が被災後の重要な収入源となっていた。もちろん、被災した土地所有者にとっても同様に重要な収入源となっていた。 ムラピ山の噴火により多くの被災地における自然植生は外来種が中心となっていた。外来種から始まる植生遷移は、二次遷移的なものであり植生の回復を促進させるものであると考えられた。これは在来の樹種のみではなしえない。また、住民生業の復興も、外来種と、土砂採取により増加した就労機会を活用して行われた。このようにムラピ山域でみられる資源利用形態は、外来種の特性および、被災によって増加した就労機会などの活用により成立するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に設置した調査区のデータをもとに被災状況の把握を行った。また、被災状況の把握・樹木および栽培作物・水と物質循環系・生業と農事暦にかんする調査を行った。また、それいがいにも中部ジャカルタ州のグヌン・キドゥルにも調査区を設置し景観の復興状況に関する調査を行っており、順調に進行している。 特に、連携研究者である内藤博士が、本年度よりインドネシア・ボゴールにある国際林業研究所(CIFOR)の研究員となっており、現地での調査がスムーズに進行したため予定よりも順調に進行した。 また、各調査区において栽培されている樹木や作物の変化に関する調査なども、現地研究協力者であるガジャマダ大学のBudiadi講師とその学生らが中心となってデータを取得したために順調に進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の調査はこれまでに得られたデータを基に、以下の3項目について調査を行い、平成25年度におこなった調査と比較をしてどのように変化したかを明らかにする。(1)屋敷林および農地の栽培作物、(2)樹木群集の動態解析、(3)被災状況の把握、これらに加えて、これまでの調査により明らかとなった、住民の被災後の重要な収入源であるサンドマイニング・災害観光についてより詳細な調査を行うこととする。特にサンドマイニングについては、1)土砂を巡る法律や習慣について、2)住民の土砂にたいする対応の変化について、3)土砂を巡る社会経済的な状況について調査を行う。また、観光産業については、1)被災前後での観光産業の変化について、2)新たな観光が被災後4年でどのように変化してきたのか、3)観光を成功させる要因について成功例と失敗例について、4)観光を巡る法律や習慣について聞き取り調査を行っていく予定である。 また、それまでの成果を踏まえてデータを論文としてまとめると同時に、熱帯域における柔軟性に富んだ資源利用システムに関する知見をワークショップなどでまとめて発表する。さらには、今後の成果出版に関する準備を開始する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、8月、12月に現地へ渡航し、樹木の遺伝的構造・ほ乳類と鳥類に関する調査を行うための下準備を行う予定であったが、インドネシアにおける調査許可の取得が順調に進まず、当初の予定通りに渡航して調査を行うことができなくなった。そのため、渡航期間を短縮したうえに、次の渡航時期を延期する必要が生じた。そこで、充分な成果をえるために次年度に渡航を変更することとした。また、それに従い調査に必要な器具の購入や、調査補助者の雇用も次年度に延期することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度消費額については、現地へ渡航する経費、現地調査補助者を雇用する経費と、それらの調査に必要な器具を購入する経費、持ち帰ったサンプルを分析するための試薬・器具の購入および分析補助者の雇用に使用する予定である。また、成果発表をするための英文校閲費や、成果報告を行う研究会の開催費用などに使用する予定である。
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