2016 Fiscal Year Annual Research Report
ラオス中南部における少数民族の健康希求行動は乳児死亡の地域間格差をもたらすか
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25300015
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
奥村 順子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (40323604)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラオス / 少数民族 / 健康希求行動 / 乳幼児 / 死亡要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に引き続き,セポン郡の7村(Alang Yai, Kaengpae Nai, Kaengluang Noy, Dong Noi, Van yean Gnai, Van yeang Noy, Sobsaly)を対象として調査を行った.調査開始以降に生まれた乳幼児も対象に加えてきたため,現在297名の小児(登録時5歳未満の小児)を追跡している.平均年齢は3.4歳(SD: 1.9歳)で,昨年度の1年間の観察期間中に少なくとも1回以上、有病と報告された小児は163名であった。 平成28年度の死亡例は1例のみで,その後実施した聞き取り調査で,当該乳児の母親が初産で陥没乳頭であったため,水分と栄養補給ができなったことが死亡原因であったことが判明した.母乳育児の推進を徹底するあまりに,人工乳(粉ミルク)の使用を避けてしまったことを教訓として今後の対応に活かすため,セポン郡の母子保健スタッフとワークショップを開催した.緊急時であっても,人工乳を使用するなど臨機応変に対応することは現場では判断できない旨の主張が相次いだ.セポン郡における乳児の生存率向上のためには,現場スタッフによる自主的かつ柔軟な対応を促すに足る教育と研修が不可欠であることが示唆された. 平成25年度から26年度にかけての11名の死亡例は,死亡時期とマラリア流行時に相関がみられ,死亡時の症状も発熱が主訴であったことから,マラリアが原因ではないかと推察している.調査地域であるセポンの降雨量と気温の年間変化とマラリア流行との相関も明らかとなった. 年齢別身長のz-scoreは,rangeが-3.67 z-score~-1.36 z-scoreと7村全てで当該年齢児の理想的身長を下回っており,対象小児が慢性的に栄養摂取不良であることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年10月に4村で5歳未満児のコホート調査を開始し,平成26年6月からは医療施設へのアクセスが極めて悪く,予防接種率が非常に低い3村を追加し,7村における2年間のデータ収集を実施することができた.この間に新たに出生した小児を加え297名の小児を2週間ごとに約3年間にわたり(本年6月をもって3年間の追跡調査となる)疾病罹患の有無とその症状を追跡したことから得るものは大きい.現地において村落保健ボランティアに対して結果のフィードバックを定期的に行ったことで,彼らの保健に関する意識に変化が見られるようになった.当初の予定と比べると,いくつかのデータ収集方法の変更はあったもののおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
約3年間追跡できたことで,その間の気候変化,地元保健行政によるマラリア対策強化プログラムの実施,栄養指標データ等と小児の有病期間との関連を探る解析をする段階にきたと考える.今年度は,データ解析に主力を置きその結果を取りまとめ,対象小児の死亡および疾病罹患等の健康に負の影響をもたらす要因を明らかにし,国際誌に投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
現地の疾病対策センターとの業務委託契約を開始したのが,平成26年6月で,それから毎年6月中旬までの1年間の契約となったことに起因し,契約更新時期が毎年6月となっている.科研費による研究期間は年度毎となっているため,最終四半期の契約額の支払いのため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地の疾病対策センターとの業務委託契約の継続如何については,目下検討中であるが,平成28年度から持ち越した研究費を最終四半期の契約費用及び平成29年度の現地研究倫理審査更新手続き等を目的とする研究者の渡航費用に充てる.
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