2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー少数民族の生活環境および未利用生物資源の調査-チン州北部-
Project/Area Number |
25300016
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
冨永 典子 放送大学, 公私立大学の部局等, その他 (30164031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐竹 元吉 お茶の水女子大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (10170713)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミャンマー / チン州北部 / 動植物資源 / 薬用資源 / 水環境 |
Research Abstract |
これまで外国人研究者の入域が許されていなかったミャンマーチン州北部での調査を、ティディムを拠点として初めて行った。チン州は山地ばかりで、ミャンマーで平野のない唯一の州である。集落は1500~1800 mの尾根の上にあり、生活圏は冬には氷点下になるなどミャンマーの他地方に比べて冷涼である。ティディムを中心として、伝統薬についての聞き取りおよび生理活性調査をし、植生、モグラ等の小型哺乳類、飲用水および河川水の水質、水生昆虫などについて調査した。また、ティディムから車にて5時間ほどのインド国境にあるハート型の小さな湖、リー湖についても陸水学的調査を行った。 植生:ミャンマーは基本的に温帯モンスーン気候であるが、チン州北部は標高1000~2700 mであるため、日本の温帯低地や亜高山帯の植生と属を同じくする植物が多数観察された。結論的に日華植物区系区の一部であると考えられる。 伝統薬:購入したものについて抗リーシュマニア症活性、抗酸化活性などを調査中である。 動物:食虫目、トガリネズミ科のAnourosorexをミャンマーで初めて確認した。また、水生昆虫についてはチン州南部のものと比較を行っている。 水環境:飲用水の水質については大腸菌群以外はおおむね良好。ただし、土壌がスレート土壌であるため、pHは8付近、カルシウム、マグネシウムなどの含量が高く、超硬水であった。ハート型の湖・リー湖は周囲約4.8 kmの小さな湖であるが、水深は15mで、水位は雨季、乾季を通じて変わらず、目立った流入口、流出口も見られないことから湧水湖と考えられる。前年の調査の時には見られなかった藻類の大発生(淡水赤潮。古来12月中旬から1ヶ月と言われている)を観察できた。優占種は渦鞭毛藻類2種ではないかと思われるが、発生要因については現在のところ不明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミャンマーの少数民族地域はインフラも整っておらず、観測地まで辿り着くことが第一の関門である。チン州は全土が山地であり、どこに行くにも未舗装の悪路を1000m以上登ったり降りたりして行かねばならない。予備的調査を行う場所として、飛行場(サガイン管区カレーミヨ)から比較的近く、かつ道もかなり良いと予想されるティディムを拠点としたが、それでもがけ崩れを重機が補修するのを待って入った。リー湖への道はさらに悪路で、4輪車が入れない場合はバイクタクシーで入る覚悟もしていたが、天候にも恵まれ何とか観測を行うことが出来た。 チン州北部は冷涼な気候のため、植生、動物相などがこれまでのシャン州、カチン州などとかなり異なると予想されたが、日本の山地、亜高山帯で見られる植物に似たものが多く見られ、これらはこれまでにミャンマーで見られなかったものが多かった。動物についても同じことが言える。前述のように、チン州北部は長らく外国人研究者の入域が許可されなかったため、様々な分野に及ぶデータの空白地域といえる。我々の調査は微々たるものであるが、モグラや植物の調査の積み重ねが東南アジアにおける空白地域を解消する一助となると考える。 ミャンマーの湖の調査は3ヶ所目であるが、それぞれ、浅くて流れの速い湖、ミャンマーで最大でかつ深い湖、小さいがかなり深く全く調査が行われていない湖と3者3様の湖の調査は意義深い。 これらの調査をさらに深め進めていくことによってミャンマーの現状認識、将来に向けての基礎データの集積を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査地をティディムの南側、チン州の州都ハーカー付近に広げ、データの集積を図る。チン州は南に行くほど標高が低くなるので、ティディムとハーカー付近の比較は興味深い。26年度は以下の点について調査を進める。 1)動植物相については前年同様に調査を行う。それによって動植物相の緯度、高度による変化の推測を可能としたい。 2)医薬資源については、市場で購入した伝統医薬と、野外で採集した薬用動植物の活性測定、活性成分の単離を進める。 3)水環境については、リー湖の調査をもう一度行い、25年度の観測で不足な点を確かめる。ついで、河川については、ミャンマー第三の河川であるチンドウィン川の支流のマニプール川の調査を25年度に行ったので、同じ川での調査をもう一度、さらには水源が異なるリー湖周辺の川の調査も行う予定である。これはリー湖の水質とマニプール川の水質が非常に異なるので必要と考える。 4)少数民族の経済的自立を助けるため、農用植物の栽培指導を引き続き行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミャンマーの少数民族地域はいまだに(というより民主化が実現した今だからこそ)政情が非常に不安定で、行ける時に行って調査しないと次年度はどうなるかわからないのが実情である。25年度は森林局大臣の許可を得ることが出来て調査に行き、不安定である場合は一気に調査を行う予定で予算を多く申請した。実際行ってみてチン州はかなり安定しており、次年度も調査可能であることが判明したので、次年度に予算を繰り下げることとした。また25年度はリー湖の赤潮を観測するため12月中旬に調査したが、季節が冬に相当するため、動植物の観察、採集には少し遅すぎたため、調査期間を短くしたこともある。26年度に参加人員を増やし、期間を長くするため次年度使用とした。 26年度は調査時期を早めて、いろいろな動植物が観察可能な雨季明けの11月に調査を行う予定である。調査地域もティディムの他に、ティディムの南、ハーカー付近まで範囲を広げ、日程も長くし、参加人員も増やす予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] New Leishmanicidal Stilbenes from a Peruvian Folk Medecine, Lonchocarpus nicou2013
Author(s)
Hiroyuki Fuchino, Fumiyuki Kikuchi, Azusa Yamanaka, Akihiro Obu, Hiroshi Wada, Kanami Mori-Yasumoto, Nobuo Kawahara, Diana Flores, Olga Palacios, Setsuko Sekita, and Motoyoshi Satake
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Journal Title
Chem. Pharm. Bull.
Volume: 61(9)
Pages: 979ー982
Peer Reviewed
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