2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるサブリージョナル・ガバナンスの研究:拡大メコン圏形成過程を事例に
Project/Area Number |
25301012
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
多賀 秀敏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30143746)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐渡友 哲 日本大学, 法学部, 教授 (80178798)
高橋 和 山形大学, 人文学部, 教授 (50238094)
若月 章 新潟県立大学, 国際地域学部, 教授 (20290059)
大津 浩 成城大学, 法学部, 教授 (10194200)
柑本 英雄 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00308230)
臼井 陽一郎 新潟国際情報大学, 国際学部, 教授 (90267451)
宮島 美花 香川大学, 経済学部, 教授 (70329051)
五十嵐 誠一 千葉大学, 法経学部, 准教授 (60350451)
福田 忠弘 鹿児島県立短期大学, その他部局等, 教授 (50386562)
森川 裕二 長崎大学, その他部局等, 教授 (90440221)
中山 賢司 創価大学, 法学部, 講師 (10632002)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 東アジア / サブリージョン / ガバナンス / 拡大メコン圏 / GMS / 非国家行為体 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる本年は、研究代表および研究分担者らが進めてきたこれまでの研究成果を統合し、成果としてまとめることに注力した。その結果を端的に言い表すと以下の通りとなる。 本研究が注目してきたのは、サブリージョンの国際秩序に与える影響である。事例として取り上げた拡大メコン圏(GMS)では、サブリージョンが当事国・周辺国の国家戦略と結びつき、緊張的あるいは協調的なフィールドとなりうる事実が観察された。研究調査を通じてさらに明らかとなったのは、サブリージョンの発展に伴う中国、タイ、ベトナム等における中央・地方関係の変化と多様な非国家行為体の関与である。その結果でもある「下」からの新たな越境的公共空間の拡大が、主権国家体系と安全保障秩序を変容させつつある実態も部分的に確認された。 本年度の個別の成果しては、例えば研究代表はこれまでのフィールドワークの成果の一部として、GMSにおける跨境簡易化の観点から、ミャンマーと中国国境そのものへの観察・記述・分析および交通インフラ整備に関する実態の進展についてまとめた(「GMSにおけるミャンマーの位置づけ-中緬国境の現状と展望」『早稲田大学社会科学総合研究』第16巻第1号) また、12月には研究会を開催し、これまでの研究成果を英語書籍「THE NEW INTERNATIONAL RELATIONS OF SUB-REGIONALISM:ASIA AND EUROPE(仮題)」として出版する準備を進めることを決定した。その前段階として和文による報告書を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、広域越境地域協力のガバナンスに着目し、広域越境地域協力が国際秩序に与える影響と可能性について検討することを目的としてきた。広域越境地域協力は、一般的には統合の進む欧州が先行事例としてモデル化されてきたが、アジアに着目すると拡大メコン圏(GMS: GreaterMekong Subregion)のように、EU のような上位機関がなくても自立的な広域越境地域協力が行われている。そこでは、国家の利害関心に寄り添いながらも、市民社会のネットワークを取り込むなど、ボトムアップ的な政策形成にも寄与している。そのためにGMSはもとより、北東アジアや欧州との比較、そのモデル化としての理論構築を目指した。 本年度に作成した最終報告書で、GMSについては例えば境界国家としてのラオスと<地域>秩序形成に関する研究、メコン地域主義を市民社会の視座から考察する研究を盛り込んだ。また、北東アジアとの比較については東アジアにおける国境地域の越境交流の実態に関する研究や中国朝鮮族によるトランスナショナルなコミュニティに関する研究が収められてる。さらに欧州との比較ではサブリージョンとしての海外領土やEU-ロシア国境地域におけるサブリージョン、欧州における自治体活動の国際規範に関する研究が含まれている。理論構築としてはマクロリージョンから概念整理を行い、空間を「ソフト」と「ハード」に腑分けする研究やマルチレベルガバナンス論をまた改めて論じている。上記の内容を鑑みるに、本研究が当初設定した目的は十分に達成されていると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、東アジアで重層的に展開するサブリージョン(下位地域)が地域の安全保障秩序に与える影響を、多様なサイズの地域の相互作を用いて分析することを目的とする。①各サブリージョンでの入念なフィールドワークと比較研究を通じて、国家戦略、地域制度、言説規範、関与/主導する主体の特徴を把握し、一種の機能的空間としてのサブリージョンの実態を明らかにする。②それをもとに、主流理論が看過してきたサブリージョンの安全保障機能を析出し、東アジアの安全保障政策に新たな知見を与える。 具体的な方針としては、以下の4点に着目する。①非国家行為主体による「下」からのサブリージョン形成。特に非国家行為体のプレゼンス拡大がサブリージョンに関わる制度や規範に与える影響を分析する。②中央・地方関係の変容。地方政府は国家の統制下にありながら、ある程度の自律性を有していると見られる行動をとることがある。そのサブリージョン形成へ影響を看取する。③サブリージョンと国家戦略。サブリージョンという新たな秩序空間の発展が国家戦略へどのようにフィードバックされるのかを分析する。④サブリージョンの安全保障機能。伝統的安全保障のみならず、非伝統的安全保障の観点から、サブリージョンによる秩序構成(非)作用を考察する。 上記の目的を達成するために、引き続き各サブリージョンで入念な現地調査を実施し、その実態把握を進める。国家間関係の緊張や経済のグローバル化の影響を受けて、国境とサブリージョンは急速な変化を見せつつある。このためサブリージョン研究では、定期的かつ定点観察が欠かせない。
|
Causes of Carryover |
英文書籍出版の準備を進めてきたが、出版担当者との打合せおよびピアレビューが当初の予定よりも長引いてしまったため、英文翻訳および校閲費としての支出ができなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ピアレビューが終わり次第、原稿の修正および追加チャプターの英文校閲費として使用する。
|
Research Products
(14 results)