2013 Fiscal Year Annual Research Report
復興・防災まちづくりとジェンダー―生活再建と制度設計に関する国際比較研究
Project/Area Number |
25301013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山地 久美子 大阪府立大学, 人間社会学部, 客員研究員 (20441420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊田 久美子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (20326242)
田間 泰子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (00222125)
陳 來幸 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (00227357)
山崎 栄一 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (00352360)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 復興/防災 / まちづくり / ジェンダー / 阪神・淡路大震災 / 東日本大震災 / ハリケーン・カトリーナ/サンディ(米国) / 921地震/88水害(台湾) / ビリス台風(韓国) |
Research Abstract |
本研究は復興・防災プロセスをジェンダーの視点から検討し日常のまちづくりに有用な制度設計を提示することを目的としている。調査は復興まちづくりへの参画、経済復興、被災者支援体制、政策決定過程参画プロセス、妊婦、母子・父子世帯、多文化共生、メディアを軸とした国際比較研究である。 2013年度は日本(阪神淡路大震災、東日本大震災、桜島噴火)と台湾での調査を中心に韓国・米国・ドイツ・イタリアの資料調査を行った。 東日本大震災後、防災・復興への社会的関心は高まっているが、「復興」→「防災」の一連のプロセスは年月をかけた調査研究が必要である。震災から20年を迎える阪神・淡路大震災、3年目の東日本大震災調査の復興と桜島の噴火災害調査から恒常的な災害を抱える地域のまちづくり、人々の生活再建に関する調査を実施した。大規模な災害が発生する毎に様々な法諸制度が確立され被災者支援のメニューは確実に増えているが、公的支援へのアクセスは建築構造物被害の「罹災証明」の有無と罹災世帯の構成員である事が必須条件となり、それによる「被災者支援レジーム」が構築されている事を明らかにした。災害弔慰金の「生計維持者」の適用方法など、所得とジェンダー課題に関連する事項の調査分析を進めている。 東日本大震災の地震・津波とその後の原子力発電所事故放射能汚染による県外避難者調査研究を進めており、当事者を招いてシンポジウムを開催した。全国避難先での仮設住宅延長要望、被災者生活再建支援法の適用、県域を越えた連携等、諸課題について議論し、今後調査を進める予定である。 国際比較調査は主に研究協力者との意見交換、資料調査を実施した。日本の災害対策・復興の支援制度、まちづくりについて住宅復興、就労・起業、復興支援員や地域のエンパワーメント等の課題が東日本大震災調査研究の中で抽出されてきており、これらを国際比較の基礎的調査として用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査は日本を中心とした被災地現地での国際比較研究に特徴がある。本年度は日本・台湾の被災地調査、法諸制度、支援制度の調査、インタビュー調査を中心に進め、その他の海外被災地調査は次年度に行うこととした。その理由は東日本大震災からの復興が面的整備面の課題により復興公営住宅の建設、自力再建ができないため復興が遅れ、被災者は元の地域に戻れずまちづくりが進んでいないと判断したためである。このような状況から国際比較調査の実施と検討が可能となる次年度での実施とした。研究は東日本大震災被災地にて女性達との意見交換会、阪神・淡路大震災被災地にて海外研究者、メディア関係者を招いて研究会の主催、福島県新地町復興まちづくり研究会を共催した。東日本大震災地震・津波/原発事故の県外避難者の現状と支援に関するシンポジウムを主催し、災害復興とジェンダーシンポジウムを大阪府立大学女性学研究センターと共催した。文化復興とまちづくりについても事業の共催、調査協力を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は日本、韓国、台湾、米国、ドイツ、イタリアにおいてこれまでの調査知見を基に国際比較調査を行う。調査はそれぞれの国・地域の担当者と研究協力者が共通手法を用いて現地の言語で実施し、研究代表者が全体をまとめる。調査から各国・各地の復興・防災まちづくりにおける共通点・相違点、政策・制度上の課題を抽出し、普遍的な課題と国・社会によって異なる課題を明らかにする。調査結果は日本語に訳した上でまとめる予定である。 東日本大震災は4年目に入るため調査研究を進めると同時に、被災当事者の方々と共にまちづくりを考える取組みを進める。復興公営住宅の建設・防災集団移転・区画整理事業も進むため、復興まちづくりへの住民参加、公的な被災者支援制度の調査研究を進める。被災現地で復興まちづくり、多文化共生、女性のエンパワーメント、災害時妊産婦支援に関する意見交換会・シンポジウム等を開催する。 2014年は阪神・淡路大震災から20年、台湾921地震から15年、中越地震から10年である。そこで大規模災害の長期的な復興とまちづくり、被災者当事者の声、法諸制度の課題、県外避難者、メディア調査を実施した上で、研究会・シンポジウムを開催する。 これらの調査成果と知見は世界社会学会議(2014年7月)をはじめ論文、学会報告、講演等の形で国内外で発表し、広く社会に伝える。新聞やラジオ等、メディアからの発信も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は日本・韓国・台湾・米国・ドイツ・イタリアの被災現地における調査と国際比較研究が柱であるが、2013年度は基礎調査を中心とし日本においては被災地調査と研究会・シンポジウム等を実施した。2014年・15年度に各担当者を中心に国際比較調査を実施するため、基金の一部を2014年度の現地調査に使用することとした。 2014年・15年度に国際比較調査と調査のまとめを現地の協力者とともに実施するため、日本・韓国・台湾・米国・ドイツ・イタリアでの旅費・調査費に用いることで決定している。
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Research Products
(26 results)