2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国の対ASEAN文化外交の実像とその政治社会的な影響に関する調査研究
Project/Area Number |
25301018
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
首藤 もと子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10154337)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 亜樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00580755)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ASEAN / 中国 / 文化外交 / 孔子学院 / 公共外交 / 広報外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2000年代後半から中国が公共外交の一環として文化外交を展開するようになったことをふまえ、ASEAN諸国のうちタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマー7カ国を対象に中国の文化外交の状況とその社会経済的な影響について、それぞれ現地研究者の協力を得て調査した。とくに、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアにおいては、「孔子学院」開設をめぐる背景や運営とその影響等について現地調査を行った。ベトナムとミャンマーには「孔子学院」がないため、より広範な中国の文化交流の状況とその影響について考察した。 総括として、件数や規模からみて中国が最も力を入れているのはタイ(14件)であり、次にインドネシア(6件)とフィリピン(4件)、そしてマレーシアとカンボジア(各1件)である。受講生数ではタイとフィリピンが盛況であるが、マレーシアやインドネシア(3件を調査)では、他大学や政府機関、国軍機関等にも「出向」しており、現地中国語新聞の報道も多く多面的に活動している。受講生の多くは非中国系であり、中国系受講生が多いタイやカンボジアとは異なる。 一方、ベトナムは歴史的に中国文化を受容し適応しており、中国文化はすでに内部化されている。そして、共産党間の関係で中国における官僚の研修等が行われている。カンボジアの場合、「孔子学院」の機能は限定的である。むしろ、中国からの教育援助や中国系工場、中国製品を通して中国文化に接することが圧倒的に多い。 さらに、これらの諸国で、「孔子学院」を開設したのと並行して、領事館の新設や地方政府レベルでの文化交流なども積極的に進めてきた。こうした近年の文化外交の多面的な進展のなかで、ASEAN諸国の若い世代には中国に肯定的な認識が醸成されている。それは中国の文化外交の成果ともいえるが、しかし「孔子学院」のみの成果だとはいえない。
|
Research Products
(6 results)