2013 Fiscal Year Annual Research Report
バイカル湖水系の河川における汚染物質除去機構の解明と応用
Project/Area Number |
25304001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川東 正幸 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (60297794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 眞紀子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10175119)
藤嶽 暢英 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50243332)
小林 孝行 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (10551228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重金属 / コロイド粒子 / 国際河川 / 収着 / 粘土 / 腐植 / 鉱山 / セレンゲ |
Research Abstract |
バイカル湖への流入河川で最大の流量を有するセレンゲ河水系にはモンゴル領内でオルホン河、トゥル河が合流しており、それぞれ流域に居住地、農地だけでなく鉱山地帯を有する。上流域での農業・鉱業・都市活動は少なからず過剰な汚染物質を水系に拠出し下流域水質に影響を与えることが予測された。しかしながら、これまでに最下流に位置するバイカル湖において水質汚染の報告はなく、上流域の汚染物質の輸送移動過程において、何らかの除去機構が働いていることが予測された。 研究開始初年度はモンゴル領内において主要河川のセレンゲ・オルホン・トゥル河に沿って本流と支流から河川水と底質を採取し、ろ過膜を使用して水、懸濁物に分離して有機物と各種金属含量を定量した。また、底質も強酸による鉱物分解を行い各種元素分析を実施した。その結果は以下の通りである。 元素の分布は存在形態に応じて異なっていた。また形態ごとの元素の地理的分布も異なっており、溶存態が主体である元素(主に塩基)は土地利用上、自然または人為的に地表面に供給されたものからの表面流去による供給と考えられた。上流に湿地流域をもつ支流の合流付近で顕著に高かったが、それ以外の地点では一様であった。鉱物由来の元素濃度(Fe, Al, Mn)は濁度が高い支流の懸濁物中で極めて高く、流域の農地利用の影響が考えられた。溶存金属濃度が高い湿地流域河川では溶存有機物濃度が高く、キャリアとしての役割を担っていると考えられた。堆積物中では鉱物由来元素濃度が支流の合流点で高い傾向があり、支流の合流時における理化学性の顕著な変化によって沈殿する過程が堆積物中の濃度増加に関与している可能性が考えられた。同様の沈殿現象による元素の沈降および濃縮現象は下流域でも繰り返されていると考えられたが、ロシア領内では確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初には、対象河川の源流域付近から研究対象地のバイカル湖まで露蒙国境を越えて、調査・試料採取を進める予定であったが、ロシア側研究協力者との連絡が良好に行われず査証取得ができなかったために、現地での試料採取と分析を進めることができなかった。また、モンゴル国内では計画していた範囲内での試料採取が達成できたが、予想以上に交通条件および気象条件が悪く、移動に時間を要したため、試料採取数は計画よりも少なかった。一方、河川水深が予測よりも浅い地点が多かったため、すべての地点で堆積物を採取できたことは予想外に進んだことである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、ロシア領内における河川水の調査を行う予定にはしているが、現地協力者との数度の打ち合わせにおいて、採取地点の決定とアクセスはモンゴル領内よりも困難を極めることが予測された。また下流域ほど川幅は大きく水深が深くなるため試料の採取が困難になる。このことを解消するには船を調達する必要があるが、経費が莫大にかかるために検討を要する。一方で、上流から下流への元素の動態傾向が凡そ把握できつつあり、その結果・考察から予測できることとして、セレンゲ河がバイカル湖に到達する地点に相当するセレンゲデルタにおける元素分布がバイカル湖における元素濃度への制御機構の主たる役割を果たしていることが予測された。従って、今年度はまずセレンゲデルタにおける観測・調査および試料採取に集中することとする。セレンゲデルタも広い面積を有するため、アクセスが良好であり、且つ周辺の地表面の影響が小さい地域を探索する。このため、予備調査を4月に実施し、その結果をもとに8月に本調査を実施する。また、バイカル湖の湖岸での水質・底質調査を実施し、デルタ内河川との関係を明らかにする。さらにデルタから露蒙国境に向かう河川水調査を実施し、セレンゲデルタに着目し元素濃度の地理的変動を予測する。なお、セレンゲデルタ付近にはロシア側研究協力者が観測に使用している調査拠点があり、その使用が可能であることを確認している。
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Research Products
(2 results)