2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ属植物を中心とした共生生態系の進化・系統地理学的研究
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25304013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神保 宇嗣 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (10568281)
吉武 啓 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 主任研究員 (50517662)
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究員 (60392536)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブナ属 / 生物地理 / 共生系 / 昆虫 / 共生菌類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北半球温帯地域に隔離分布する共生生態系を対象に、1)各地域で共生生態系を構成する主要な生物群の系統・進化の過程を明らかにした上で、2)各生物群の進化における生物間相互作用の影響を解析する事によって、3)多様な共生生態系の進化史解明を目指す。 26年度の海外調査は、ヨーロッパブナを対象とし、6月にスイスのチューリッヒ郊外で行った。具体的には、3箇所のヨーロッパブナ林において、ヨーロッパブナ成木の葉、枝、根について、植物の解析と菌類のメタゲノム解析用のサンプルを採集した。加えて、実生時の共生菌類相を比較するため、実生のサンプリングも行った。さらに、ヨーロッパブナの様々な器官、および枯木に付いている菌類(主に子実体)のサンプリングも行った。同時にヨーロッパブナを餌とするチョウ目、コウチュウ目、カメムシ目の昆虫の採集、ヨーロッパブナの葉、枝、幹に寄生する菌類の採集を行った。これらのサンプルは仮同定後にDNAの抽出を行い、昆虫ではCOI、菌類では核rDNAのITS領域の塩基配列決定を行った。これらの情報は27年度調査予定の地域(北アメリカ大陸)のブナ属植物共生生物との系統解析に用いる。また、ヨーロッパブナおよび日本に産するブナ、イヌブナと、昨年度採集したタイワンブナに関して、外生・内生菌類の網羅的解析を行った。多様性解析の結果では、各地域の共生菌類に差があるのみでなく、ブナとイヌブナ間でも同様な差が見られた。種特異性の詳細な解析は27年度に行う予定である。 さらに、外生・内生菌類の季節的変化を見るために5月~12月にかけて1ヶ月ごとにブナとイヌブナのサンプリングを行い共生菌類相の解析を行った。予備的結果では、光合成を盛んに行っている時期と紅葉の時期で菌類相の変化が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していたヨーロッパブナの調査は順調に終了した。25年度に行う予定であったタイワンブナについて、ブナ、イヌブナとともに外生、内生菌のメタゲノム解析が終了した。また、日本産のブナ属2種について、共生菌類の季節的変化について外生、内生菌のメタゲノム解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は残りの大陸であるアメリカ大陸でのサンプリングを行う。また、各大陸での比較のための基礎情報として、菌類相の季節変化を日本で来年度も調査する。27年度は最終年度のため、これまでの成果を取りまとめて論文を作成する。
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Causes of Carryover |
日本産のブナの根の季節変化を追うメタゲノム解析が一部終了していないため、その費用がまだ未支出のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
メタゲノム解析用資料はすでに解析準備ができているので、27年度はじめに解析を終了する。
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Research Products
(2 results)