2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジアを中心としたインフルエンザウイルスのグローバルな進化と薬剤耐性株の伝播追跡
Project/Area Number |
25305014
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 昭彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30531389)
藤井 雅寛 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30183099)
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30621198)
長谷川 剛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90251800)
齋藤 孔良 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30460356)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / インフルエンザ / ミャンマー / マレーシア / レバノン / ベトナム / 遺伝子解析 / 地理伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、ミャンマー、マレーシア、レバノン、ベトナムのアジア4か国で採取されたインフルエンザウイルスの遺伝子比較や薬剤耐性株を追うことでアジアのウイルスの循環動態を明らかにする。 平成26年度は、ミャンマーからインフルエンザA/H1N1pdm09 が89件、A/H3N2が55件、B型114件の合計258件のウイルスが分離され、マレーシアからはB型インフルエンザを16件分離した。ミャンマーのインフルエンザ流行時期は、7-9月の雨期であり、マレーシアは、11-1月の雨期であった。これらについてウイルスHAとNA遺伝子の解析と、薬剤耐性解析については、A/H1N1pdm09のオセルタミビル耐性ウイルス(H275Y変異株)を調査した。 2014年のミャンマーA/H1N1pdm09株は、遺伝子解析の結果、すべてWHO分類クレード6Bに属した。NA遺伝子にはH275Y変異はなく、すべての株がNA阻害剤感受性ウイルスであった。興味深いことに、ミャンマーのA/H1N1pdm09は、中国で2013年に検出されたH275Y変異株と類似の遺伝子配列を持ち、ミャンマー株が中国株と非常に近縁であることを示した。 ミャンマーのインフルエンザA/H3N2は3C.3aに属した。このクレードは、2015年の南半球ワクチン株と2015-2016年北半球ワクチン株(A/Switzerland/9715293/2013)と同一クレードに属していた。ミャンマー株はワクチン株の選択に重要であることが示された。 ミャンマーのB型インフルエンザは、山形系のみがみられ、ビクトリア系は検出されなかった。マレーシアから検出されたB型も山形系の同じクレード3であった。ミャンマーとマレーシアから同じウイルスが検出されたため、東南アジアでは、ウイルスの伝播サークルがあると考えられた。 ベトナムとレバノン株は解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度はおおむね良好である。ミャンマーはインフルエンザウイルスの培養が順調であった。しかしながら、マレーシアでは、前年度の平成25年度はウイルス培養ができず、平成26年度になりようやく成功した。医療機関での保存状態が悪かったものと思われる。ベトナムは平成26年度にウイルス株を分与してもらえなかったため、平成25年度に受領した検体をウイルス遺伝子解析したが、その結果の統合はこれからである。レバノンも検体の受領が遅れたため、平成25年度採取株の型別が終わったのみでこれから遺伝子解析を進める予定である。 平成26年度に行った遺伝子解析の結果から、ミャンマーのインフルエンザウイルス株は、東南アジア株と類似しており、次に中国株との類似が高いことが判明した。中国株は日本へ流入してくる頻度も高いため、ミャンマー株を調査することは半年後の日本の流行を予測するうえで重要である。実際に、ミャンマー類似の株が日本で半年後に検出されている。また、南半球ワクチン株にミャンマー株類似の株が選ばれていることが多いため、WHOのワクチン株選定にも重要な地点であることが判明した。 薬剤耐性の点では、2013-2014年シーズンに日本で低い頻度ながらも地域で感染がみられた薬剤耐性ウイルスA/H1N1pdm09 (H275Y変異株)は、ミャンマー、レバノン共に検出されなかった。世界的には日本が突出して薬剤耐性頻度が高かったことが判明しており、我々の結果から東南アジア・中東では日本と異なり耐性頻度が低かったことが示唆された。我々の調査国はWHOの抗インフルエンザ剤耐性サーベイランスのネットワークから漏れた地点となっているため、世界的な耐性サーベイランスの観点からも重要な情報をもたらすといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、最終年度として、各国で採取された株の薬剤感受性試験とウイルス遺伝子のフルゲノムシークエンスを行い、日本の株と比較することで、薬剤感受性株の各国での頻度やインフルエンザウイルスのアジアにおける伝播経路や伝播時間について推定する。特にフルゲノムシークエンスについて今年度中に英文誌に発表することを第一の目的とする。その際、地理情報システム(GIS)を用いながらウイルス伝播について地図化して結果をわかりやすく解析する。そのほか、マレーシア、ミャンマーなどの各国のそれぞれの調査結果についてもそれぞれ英文論文を作成し、成果を発表する。
|
Causes of Carryover |
実際には、3月31日までに新潟大学に納品がなされていたが、継続研究のため3月31日までに業者への支払いが終了しなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに次年度使用分の実験用消耗品(Mupid 2X)と、文具(クリアーブック)が発注納入済みで、平成27年度4月中に業者へ支払いが終了する予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Journal Article] Characterization of Human Influenza Viruses in Lebanon during 2010-2011 and 2011-2012 Post-Pandemic Seasons2014
Author(s)
Hassan Zaraket, Clyde Dapat, Soha Ghanem, Zainab Ali, Mireille Lteif, Hiroki Kondo, Isolde C.Dapat, Kousuke Saito, Ghazi Kayali, Hiroshi Suzuki , Ghassan Dbaibo, Reiko Saito
-
Journal Title
Intervirology
Volume: 57
Pages: 344-352
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-