2013 Fiscal Year Research-status Report
コンラート・ゲスナーによる16世紀ヨーロッパの出版情報の収集と組織化
Project/Area Number |
25330401
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
雪嶋 宏一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00507957)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | コンラート・ゲスナー / 『万有書誌』 / 15世紀印刷本 / 16世紀印刷本 / チューリヒ中央図書館 / バーゼル / ヴェネツィア / 書誌 |
Research Abstract |
1.コンラート・ゲスナー『万有書誌』の著者所蔵本(チューリヒ中央図書館蔵)調査 著者所蔵本(チューリヒ中央図書館蔵)の全頁にわたる書込みを調査し、著者が本書印刷中から1550年代前半まで本文の追加訂正を行っていたことが判明した。その際、454葉裏の本文(Iohan. Serapionesの項目)を訂正して刷り直していたことを発見した。この点はこれまで認識されていなかった。チューリヒ所蔵本3冊のうち2冊が初刷りで1冊が後刷りであった。この点について日本国内所蔵本4点(早稲田本、慶應本、明治本、広島経済大学本)を調査したところすべて後刷りであった。この刷り直しについては全巻にわたる訂正追加にも関わらず、この箇所だけをなぜ刷り直したのかという問題点が浮上し新たな研究課題となった。 2.ゲスナー『万有書誌』に収録された印刷本の版の確定とゲスナーの記述の正確性 本書収録の印刷本書誌データの版を欧米で出版、公開されている15-16世紀印刷本の書誌、データベースで確定し、その正確性を検証した。ゲスナーの書誌記述3866件のうち3211件の版を確定した。それによって、ゲスナーの記述の誤謬は印刷出版地で0.9%、印刷出版者で3.4%、印刷出版年で4%ほどであり、書誌学発達以前の16世紀であることを考慮すると、相当に正確であったことが実証された。これらの版のうちバーゼル版が31.5%、ヴェネツィア版が14.2%、パリ版が9.5%であり、印刷業者ではヴェネツィアのアルド・マヌーツィオおよびその後継者の版が5.8%、バーゼルのペトリ父子の版が5.6%、リヨンのグリフィウス版が5.3%であった。ゲスナーは1冊の本の著者、編者などで副出し、収録作品を個々に分出していたため、重複記述を除く収録版数は2734版であったことが判明した。また、本書にはドイツ語などの俗語文献が収録されていたことも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲスナーが記述した印刷本情報から実際の版を確定する作業が難航して予想以上の時間がかかったため、研究成果の一部については論文発表を行うことができたが、学会での発表は年度内には行えなかった。そのため、やや遅れたが2014年5月の日本図書館情報学会春季研究集会で行うこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
『万有書誌』に収録された印刷本の検証がほぼ終了したため、2014年度は『万有書誌』第2巻に当たる分類目録『総覧』および『神学の部』に収録された文献情報と『万有書誌』収録の情報との関係を究明して、ゲスナーがどのように文献情報の処理を行ったのかを考察する。その際に『総覧』および『神学の部』に新たに補遺された文献情報については2013年度に作成したデータベースと比較しながら追加し、ゲスナーが収集した文献情報の全貌を解明する。それとともに、チューリヒ中央図書館所蔵のゲスナー自筆書き込み本の調査を継続して、ゲスナーによる文献情報の収集・蓄積の仕組みを考察していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定した旅費が低めに抑えられたことである。円安が海外出張の旅費に影響すると予想していたが、それほどの影響はなく、予算内で十分まかなえた。 次年度使用額については、資料購入費として研究資料の充実に努めるものとする。
|
Research Products
(2 results)