2014 Fiscal Year Research-status Report
光ー光合成曲線に基づく人工衛星データによる総生産量推定アルゴリズムの開発
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25340007
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
村松 加奈子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (20252827)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 総生産量 / 衛星データ / 全地球 / 気孔 / キャパシティー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,昨年度から引き続き,以下の3つの課題に取り組んだ。 課題1)衛星データを用いた総生産キャパシティー推定アルゴリズム:本研究では全地球での推定を目指しているため,本推定アルゴリズムが,同じ植生タイプでも生育地域の異なるものについても適用可能かについて,ヨーロッパのフラックス観測サイトのデータを用いて調べた。その結果,日本とアメリカのフラックスサイトからの結果(昨年度までに実施)と同様であり,同じ手法で推定可能であることが明らかとなった。 課題2)リモートセンシング技術を利用した植生の気孔開度推定アルゴリズムの開発:昨年度までに,熱赤外イメージャーを用いた個葉の気孔コンダクタンス推定方法を確立し,測定データに適用してきた。しかし,推定値の時間変化パターンはほぼ再現できるものの,絶対値には一定値がのっているという問題点があった。本年度はその原因を明らかにし,本研究で進めているアルゴリズムでは,気孔コンダクタンスの最大値からの低下率がわかればよいことを,地上で行った樹冠での実験データより明らかにした。以上を踏まえ,総生産キャパシティーから総生産量推定の枠組みを決めた。次に,フラックスデータを用いて群落コンダクタンスをビックリーフモデルで計算し,群落スケールでも,地上実験と同じ枠組みで総生産量推定が行える可能性を示した。 課題3)衛星データによる植生機能タイプ分類項目の設定:昨年度に引き続き,課題1)2)を実施しながら進めた。総生産キャパシティー推定のための植生指標と光―光合成曲線のパラメータを推定するためのパラメータとの関係式が,植生タイプ毎にグループ化できそうであり,日本とアメリカのフラックスサイトの解析結果と,ヨーロッパのフラックスサイトの解析結果が同様であった。以上より,昨年度までと同様の植生タイプのグループ分けができそうであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題1),課題3)に関しては順調に進んでいるが,課題2)は少し遅れている。 課題2)について,本研究費申請時の予定では,全地球での気象データを用いて,気孔開度を調べる予定であったが,そこまでは本年度は到達できなかった。 その原因として,本研究では,光合成の日変化をモデルに組み込むことが大きな特徴であるが,全地球気象データで日変化まで計算した結果を入手できなかったためである。3月にテスト的な日変化を計算した気象データを入手することができたので, まずは,そのデータを使用して解析を進め,全地球での必要な気象データの入手を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,全地球の総生産量推定を,総生産キャパシティーをまず推定し,次に光合成の抑制量を,気孔開度の日変化を指標化した気孔開度指標を,熱赤外イメージデータから推定し,以上を算することにより,総生産量を推定する予定である。そのために,総生産量キャパシティーの推定アルゴリズム(課題1),気孔開度指標の定義とその推定アルゴリズム等の開発を行なってきた(課題2)。また,本アルゴリズムを適用するために,全地球での植生分布図が必要であり,本研究から,どのような植生タイプに分けるのかを提案する必要がある(課題3)。課題1,課題2は,今年度に引き続き,同様の方法で解析を進める。課題2については,特に,樹冠と群落スケールでの枠組みが今年度までに完成したため,衛星スケールにスケールアップするために,ルックアップテーブル作成が大きな課題となる。ビックリーフモデルを用いて,さまざまな気象条件でのルックアップ作成方法について研究を進める。また,衛星データからの気孔開度指標の計算方法とその適用についても研究を進める予定である。そのために必要な気象データの入手に関しての依頼を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で使用している植生指標(クロロフィルインデックス)の開発者である,Gitelson博士と直接会って,本研究アルゴリズムに関して議論を行う必要性が,平成26年度の途中より生じた。平成26年度の3月中,平成27年度の5月,あるいは,9月の国際会議出席にあわせてのいずれかで伺う可能性もあったため,平成26年度の予算使用を控えていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Gitelson博士との議論のために,イスラエル工科大学への旅費,および,国際会議の費用として使用する。
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Research Products
(10 results)