2014 Fiscal Year Research-status Report
廃棄物溶融スラグへのCa, Al還元物の高温溶解/スラグ安定化ダイナミクスの解明
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25340069
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 仁樹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80115633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 光宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60345931)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 溶融スラグ / カルシウム化合物 / 高温溶解 / 都市ごみ / 溶融処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は都市ごみ等の溶融処理過程で粘度調整剤に用いるCaO(CaCO3),あるいは脱硫過程で生成するCaSO4, CaS等のカルシウム化合物のSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解特性を速度の観点から明らかにすることを目的としている. 本年度は、平成25年度に実施したCaO粒子のSiO2-Al2O3-CaOの静止系溶融スラグへの溶解速度解析の一環として,CaO粒子の溶融スラグへの溶解に及ぼす溶融スラグ粘度およびCaO粒子径の影響を調べるために,スラグベース材であるCaO濃度を一定に保ちながら((Ca/S比一定)粘度調整用のアルカリ成分としてMgOを加えたSiO2-Al2O3-CaO-MgOの4元系スラグを用いた検討を行った.その結果,CaOの溶解速度は溶融温度が高いほど,またスラグ粘度が低いほど増大することを認めた.このとき,CaOが溶融スラグに溶解する過程ではCaO粒子とスラグ融液の界面で2CaO・SiO2が形成されるため,CaOの溶解速度解析にあたってCaO粒子-スラグ融液間のCaO濃度差を三元状態図から推算した.本速度解析で得られたCaOの溶融スラグへの溶解速度は溶融温度に比例,およびスラグ粘度に反比例し,溶解速度定数はこれら両パラメータを用いて良好に相関できた.また,CaOの溶融スラグへの溶解速度はCaO粒子表面積に比例(粒径の2乗に反比例)することを認めた. さらに,本年度は次年度計画に先立って,都市ごみ溶融スラグに比較的多く含まれる鉄分(5-10 wt%)によるCaO粒子の溶解速度の測定を一部行い,SiO2-Al2O3-CaO-FeO系溶融スラグではSiO2-Al2O3-CaO 系溶融スラグに比べてCaOの溶解速度は大きく増大することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,CO-CO2-N2雰囲気におけるCaSO4, CaS, AlのSiO2-Al2O3-CaO系スラグへの溶解・残存特性を調べる予定であったが,平成25年度での検討により,溶融スラグ中の未溶解CaOとCaSの識別,ならびにスラグ固化体中の微量Alを定量することは困難なことから,平成26年度では本申請課題のキーポイントとなるSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへのCaO粒子の溶解挙動に対する速度解析手法を確立した. 具体的には,SiO2-Al2O3-CaOの静止系溶融スラグへのCaO粒子のN2雰囲気下での溶解速度式の導出を行い,溶解速度に及ぼすCaO粒子径,溶融温度および溶融スラグ粘度の関係を明らかにした.これに関連して,三元状態図を用いてスラグ組成ごとにCaO表面―溶融スラグ間のCaO濃度差の推算値を用いることによって,溶解速度定数は温度(粘度)のみを独立変数として算出することができた.本速度解析法によって,平成26年度は各種組成を有するSiO2-Al2O3-CaO-MgOの4元系溶融スラグへのCaOの溶解速度定数が求められ,この溶解速度定数は溶融温度と溶融スラグ粘度によって相関できることを示した. 以上より,本研究目的で取り上げたスラグの安定化に直接関係するCaOの溶融スラグへの溶解ダイナミクス解明の研究成果は,本年度の研究計画を十分満たしており,本年度の研究進捗度は「おおむね順調に進展している」と評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
上記(3)において記述したように,平成26年度および27年度の当初計画では,CO-CO2-N2雰囲気下でのCaSO4, CaS, AlのSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解挙動の検討を予定していたが,これまでの予備検討により溶融スラグ中の未溶解CaOおよびCaSの分析,ならびに平成27年度実施予定の溶融スラグへのAlの溶解実験では,スラグ固化体中の微量Alの定量化が困難と予想されたことから,平成26,27年度の当初研究計画は変更するに至った.一方,平成26年度は平成25年度に実施したCaO粒子のSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解速度の測定結果を取りまとめるに当たり,CaOの溶融スラグへの溶解速度解析を実施した.とくに平成26年度は,CaO粒子表面―溶融スラグ間のCaO濃度差をスラグダイヤグラムから見積もることによって,CaOの溶融スラグへの溶解速度式を導出できた. 平成27年度はこの溶解速度式に基づいてCaOのSiO2-Al2O3-CaO-FeO系溶融スラグへの溶解速度解析を行い,本溶解速度式の妥当性を検証するとともに,都市ごみ溶融スラグの安定化を評価する上で,MgおよびFeなどの各種成分を含む溶融スラグへのカルシウム成分の溶解特性を明らかにする予定である.本研究成果は現在,スラグ中に残存する遊離カルシウムに起因するスラグの不均一性および不安定性を解消するためのカルシウムの溶融スラグへの溶解における速度指針を与えるものと期待される.
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Research Products
(2 results)