2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350386
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
澤井 直 順天堂大学, 医学部, 助教 (40407268)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガレノス / ヴェサリウス / シルヴィウス / ファロッピオ / 古代の影響 |
Research Abstract |
当該年度に行ったのは、ガレノスの骨学研究の初期近代への影響の調査である。 16世紀にガレノスによる骨学研究書のギリシア語原典とラテン語訳がヨーロッパに知られるようになり、それに対する注釈書が生まれた。特に重要なものはイァコブス・シルヴィウス(1478-1555)、アンドレアス・ヴェサリウス(1514-1564)、ガブリエレ・ファロッピオ(1523-1562)のものである。ヴェサリウスの場合は著名な『人体構造論』(1543)の第1巻が骨学を扱い、その章構成はガレノスの骨学書と一致し、また記述される内容にはガレノスの記述への注解が多数含まれていたため、これも一種の注釈書と解釈することが可能であった。 上記3者のガレノス骨学書へのアプローチは同じではなかった。シルヴィウスは実際の骨の観察とガレノスの記述を照らしあわせて、齟齬がある場合にはその他の証拠と合わせて人体の変質という観点から説明しようと試みている。観察と権威ガレノスの両者を優先していた。ヴェサリウスはガレノスを誤りと断じ、その源泉をガレノスが動物の骨にもとづいて記述したことに求めている。ファロッピオに関してはヴェサリウス以降になぜガレノスを取り上げるのか、という視点から分析を試みた。ファロッピオは骨の構造の記述そのものに関してはガレノスが誤っていたことは既成事実として受け入れ、それでも生理学に関してはガレノスを参照すべきであるために、各骨の記述を生理学との関連から解説を行っている。 以上のようにガレノスの骨学への対応は三者で大きく異なっていた。ヴェサリウスによるガレノスの誤りの指摘が転換点となっていた。従来ヴェサリウスの解剖学書に対しての転換点に立つという評価は多数行われていたが、離れた世代・時代との比較から評価されることが多かった。今回の調査がより近い世代間での変化を見ることで、ヴェサリウスの影響の詳細を明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該度の目標はガレノスの骨学の影響を調べることであった。 当初は網羅的に解剖学書の内容を比較検討する予定であったが、収集した解剖学書を読みながら、多数の解剖学書の中から、特に重要性の高い注釈書をピックアップして比較を行った。 分析した対象の数に関しては目標を下回ったが、分析したい内容に関しては目標通りのものが得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当該年度の研究と同様の方法を用いて、ガレノスによる筋肉研究の影響を調査する。 その上で骨と筋肉の研究におけるガレノスの影響、初期近代において独自の内容等をまとめ、初期近代の解剖学においてヒトと動物がどのような関係にあったのか、テキストに書かれる構造と観察した構造とをどのように関係付けていたのかを明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究資料として購入予定であった16・17世紀の解剖学書が古書市場でも見つからなかったために、余剰が発生した。 引き続きGasparad Bauhin(De humani corporis fabrica、1590)、Gabriele Falloppio(De partibus similaribus humani corporis、1575)、Archangelo Piccolomini(Anatomicae praelectiones、1586)の入手に努め、早めに分析を行う予定である。
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