2016 Fiscal Year Research-status Report
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25350386
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
澤井 直 順天堂大学, 医学部, 助教 (40407268)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医学学習指南書 / 解剖学習 / 解剖用語 / 動物解剖 / デカルト |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は1)西欧初期近代の医学学習における解剖学の位置づけの確認、2)人体解剖で用いられる用語についての研究を行った。 1)これまでの研究では解剖学者が出版する書籍について解剖学者側から考察してきた。当然、専門的な見解をどのように見出し、どのように発信したかということが中心となるが、本年度はその情報の受け手側について調査した。従来の研究において、初期近代の解剖学書の当時の評判や増刷の状況からの社会的受容についての考察は行われてきたが、多くの解剖学書が意図していた教科書としての利用を明らかにすることを目的として調査を行った。使用した資料は、初期近代に出版された「医学学習指南書」である。医学の初学者向けに書かれた書籍ジャンルで初期近代に継続的に複数の著者によって出版されていた。 結果として、16世紀の指南書では解剖学習を積極的に推奨するものは少なく、17世紀以降に医学教育の中に解剖学を本格的に導入されていったという状況が明らかになった。16世紀後半に近代解剖学を興り、多数の解剖学書が出版されるようになったが、教育システムの中に取り入れられるまでには少し時間がかかったものと考えられる。 2)前年度までは人体解剖学書の用語を扱っていたが、本年度は動物解剖における用語との関係について調査した。調査対象として動物解剖を積極的に行い、詳細な記録を残したルネ・デカルトを選んだ。 結果として、デカルトが残し、没後にまとめられて出版された解剖学の手稿『解剖学摘要』の用語は、ほぼガスパール・ボアン『解剖劇場』のものであることが分かった。ヒトと同じ構造の場合には同じ名称を用い、ヒトには存在しない部位を記載する際には、どのような構造かを詳細に記し、名称による指示を避けていることが明らかになった。人体解剖用語の整備が動物解剖の用語に影響を与えたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査は概ね順調に進んだが、28年度中に研究成果を論文として発表する予定であったにもかかわらず29年度に持ち越すことになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
早急に論文として研究成果を発表する。
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Causes of Carryover |
論文作成に必要な資料の公刊が遅れたため、また論文作成が年度内に間に合わず英文校閲費として予定していた費用が使用されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
早急に資料を購入して論文をまとめ、英文校閲を行い、発表する予定である。
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