2013 Fiscal Year Research-status Report
大学生のライフスタイルと非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に関する調査研究
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25350835
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
宮川 八平 茨城大学, 保健管理センター, 教授 (20219728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施 泰子 茨城大学, 保健管理センター, 准教授 (60647725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) / 大学生 |
Research Abstract |
茨城大学において定期健診を受けた大学生6926名(男4299名、女2627名)のBMI、および体脂肪率を測定し、男女別・学年別に肥満およびやせの割合を調査し、それぞれの割合を比較検討した。体脂肪率が男子で30%以上、女子で35%以上の肥満の学生のうち、インフォームドコンセントの得られた70名(男21名、女49名)を対象に腹部超音波検査により脂肪肝の判定をおこない、大学生における脂肪肝の出現頻度を調べた。同時に食物摂取状況調査をおこない、栄養ソフトにより、エネルギー、3大栄養素に加え、脂肪酸、食物繊維摂取量などを算定した。脂肪肝の診断は腹部超音波検査によりおこない、エコー減衰率、エコー輝度、肝静脈像の抽出度、肝腎コントラスト比の項目を0,1,2にスコア化し、合計点数が0:正常、1-3軽度、4以上:中等度に分類した。肥満男子学生の76%が中等度の脂肪肝を呈した。一方、肥満女子学生のうちわずか6%が中等度の脂肪肝を呈するのみであった。内臓脂肪の蓄積の指標として、生体インピーダンス法によりウエスト径、内臓脂肪率を測定した。男子学生の過半数がメタボリック予備軍(腹囲が男性が85cm以上、女性が90cm以上)に該当し、そのうち7名が中等度の脂肪肝を呈し、男子学生においてはNAFLDがメタボリック症候群の肝臓における表現型となる可能性が示唆された。平成25年度には欧州消化器病学会(平成25年10月、ベルリン)に参加し、欧州における非アルコール性肝炎の研究動向について情報収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肥満、糖尿病、脂質代謝異常などいわゆる生活習慣病を基礎に発症する例が多く、青年期においても頻度が増加している。その発生メカニズム、病態については十分解明されていないため、大学生を対象として解析を試みた。平成25年度は、(1)大学生における非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の実態、(2)食事調査、および(3)メタボリック症候群との関連性について調査・研究をおこなった。いずれも、おおむね順調に進展している。非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の実態については、茨城大学学生の定期健康診断にてBMI、および体脂肪率を測定し、体脂肪率が男子で30%以上、女子で35%以上の肥満の学生を対象に脂肪肝の判定をおこない、青年期における脂肪肝の出現頻度を調査した。さらに、それらの肥満学生を対象に食物摂取状況調査をおこない、栄養ソフトにより、エネルギー、3大栄養素などを算定した。メタボリック症候群の肝臓における表現型として、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目されている。今回、腹囲、血圧などによりメタボリック症候群あるいはその疑いと診断される学生の割合を調査し、進行性の肝病変であるNASHとメタボリック症候群との関連性について基礎的検討をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
【非アルコール性脂肪肝(NAFLD)における脂肪酸代謝】 NASHにおいてなぜ炎症や線維化が惹起されるかについては単純性脂肪肝に何らかの病的刺激(second hit)が加わり、炎症や線維化が惹起されるという説が有力である。second hitとしては、活性酸素、サイトカインなどの関与が想定されているが、今回、遊離脂肪酸およびインスリン抵抗性(HOMA-R法)に着目し、脂質代謝、脂質過酸化との関連において検討をおこなう。肝細胞に取り込まれる脂肪酸は、食物から15%、残りは脂肪組織から動員される。食事中の脂肪酸についてMussoら(Hepatology 37:909-916, 2004)は、肥満や脂質・糖代謝異常を合併しないNASH25例と対照群25例で食事組成を比較し、NASHで飽和脂肪酸、コレステロール摂取量が多く、逆に多価不飽和脂肪酸、食物線維、ビタミンC,Eの摂取量が少ないことを報告している。飽和脂肪酸はJNKリン酸化と小胞体(ER)ストレスを惹起し肝細胞障害を誘導するとされているが、一方、不飽和脂肪酸はインスリン抵抗性や脂肪肝を改善する。これに加えて、内臓脂肪からの脂肪酸が大量に肝臓に流入するため、肝ミトコンドリアにおけるβ酸化能がその処理能力を上回り、脂肪蓄積の増強、発生する活性酸素による細胞障害が引き起こされる。それらを検証するために、空腹時、および食後の血液中遊離脂肪酸を測定し、NAFLDにおける食後の脂肪酸量および組成の変化について検証する。さらに、酸化ストレスの指標としてのチオレドキシンとの相関を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に購入予定であった呼気アルコール検出器が年度内に納入困難となったため。 呼気アルコール検出器は平成26年度に購入予定であり、その他の使用計画に変更はない。
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Research Products
(2 results)