2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生のライフスタイルと非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に関する調査研究
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25350835
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
宮川 八平 茨城大学, 保健管理センター, 教授 (20219728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施 泰子 茨城大学, 保健管理センター, 准教授 (60647725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も、前年度に引きつづき茨城大学において定期健診を受けた大学生6815名(男4260名、女2555名)のBMI、および体脂肪率を測定し、男女別・学年別に肥満およびやせの割合を調査し、それぞれの割合を比較検討した。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の実態については、体脂肪率が男子で30%以上、女子で35%以上の肥満の学生のうち、インフォームドコンセントの得られた71名(男24名、女47名)を対象に腹部超音波検査により脂肪肝の判定をおこない、青年期における脂肪肝の出現頻度を調査した。肥満男子学生の83%が中等度の脂肪肝を呈した。一方、肥満女子学生のうちわずか15%が中等度の脂肪肝を呈するのみであった。さらに、それらの肥満学生を対象に食物摂取状況調査をおこない、栄養ソフトにより、エネルギー、3大栄養素に加え、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ω3/ω6比などを算定した。男子学生において、中等度以上の脂肪肝を呈した19名と呈しない4名を比較すると、脂質摂取量g(76.0 vs 42.7)、飽和脂肪酸(22.8 vs 13.6)、多価不飽和脂肪酸(14.0 vs 7.9) であり、中等度脂肪肝例において脂質摂取量・飽和脂肪酸量が明らかに多いが、ω3/ω6(0.19 vs 0.16)は有意な差は見られなかった。内臓脂肪の蓄積(腹囲が男性が85cm以上、女性が90cm以上)の指標として、生体インピーダンス法によりウエスト径、内臓脂肪率を測定した。肥満男子学生の過半数がメタボリック予備軍に該当し、そのうち19名が中等度の脂肪肝を呈し、男子学生においてはNAFLDがメタボリック症候群の肝臓における表現型となる可能性が示唆された。平成26年度にはヨーロッパ臨床栄養学会(平成26年9月、ジュネーブ)に参加し、欧州における非アルコール性肝炎の研究動向について情報収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は (!)大学生における非アルコール性肝疾患(NAFLD)の実態 (2)食事調査 および (3)メタボリック症候群との関連性 について調査・研究をおこなった。いずれもおおおむね順調に進展している。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の実態については、茨城大学学生の定期健康診断にてBMI、および体脂肪率を測定し、体脂肪率が男子で30%以上、女子で35%以上の肥満の学生を対象に腹部超音波検査により脂肪肝の判定をおこない、青年期における脂肪肝の出現頻度を調査した。さらに、それらの肥満学生を対象に食物摂取状況調査をおこない、栄養ソフトにより、エネルギー、3大栄養素などを算定した。今回、遊離脂肪酸およびインスリン抵抗性(HOMA-R法)に着目し、脂質代謝との関連において検討をおこなった。肝細胞に取り込まれる脂肪酸は、食物から15%、残りは脂肪組織から動員される。食事中の脂肪酸については、肥満や脂質・糖代謝異常を合併しないNASH25例と対照群25例の食事内容を比較し、NASHで飽和脂肪酸、コレステロール摂取量が多く、逆に多価不飽和脂肪酸、食物線維、ビタミンC,Eの摂取量が少ないことが報告されているMussoら(Hepatology 37:909-916, 2004)。飽和脂肪酸はJNKリン酸化と小胞体(ER)ストレスを惹起し肝細胞障害を誘導するとされているが、一方、不飽和脂肪酸はインスリン抵抗性や脂肪肝を改善する。これに加えて、内臓脂肪からの脂肪酸が大量に肝臓に流入するため、肝ミトコンドリアにおけるβ酸化能がその処理能力を上回り、脂肪蓄積の増強、発生する活性酸素による細胞障害が引き起こされる。メタボリック症候群の肝臓における表現型として、非アルコール性肝炎(NASH)が注目されている。今回、腹囲、血圧などによりメタボリック症候群あるいはその疑いと診断される学生を調査し、NAFLDがメタボリック症候群の肝臓における表現型となる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満に伴う非アルコール性脂肪肝の治療法としては減量を基本とし、そのうえにsecond hitを減少する目的でVitE、チアゾリジン誘導体、ピオグリタゾンなどの薬物療法が試みられている。平成27年度は、食生活ばかりでなく、運動習慣に関連した調査およびそれにもとづいた指導をおこない、それらの持続によって肝機能検査の改善、脂肪肝の改善が得られるかを検証する。運動量の評価は、Mets, エクササイズ(EX)によって評価する(厚生労働省 生活習慣病予防のために-:エクササイズガイド2006)。EXはスポーツ・レクリエーション活動、スポーツ授業(水泳、バトミントン、体操など)時の身体活動、および日常の生活活動を含んでいる。食事療法は管理栄養士による肥満の食事指導をおこなう。半年年以上経過観察した肥満学生を対象に体重減少群と不変群に分類し、減量によってNAFLDが改善するか否かを検討し、各種パラメーターのうち改善を導いた要因の解析をおこなう。
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Causes of Carryover |
フィジカルヘルスミーティング(室蘭工大、平成27年3月19日~20日)出席の旅費その他の支払、および謝金の支払が平成27年度に繰り越されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された分の旅費および謝金の支払は平成27年度に支払い予定であり、その他の使用計画に変更はない。
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Research Products
(4 results)