2015 Fiscal Year Research-status Report
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25351001
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
乾 幸二 生理学研究所, 統合生理研究系, 准教授 (70262996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元村 英史 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10324534)
西原 真理 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60380325)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳磁図 / 介在細胞 / IPSP / プレパルス |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚プレパルス抑制(PPI)の手技を用いて、抑制に介在細胞が関与すると考えるのが妥当か否かについて検討しました。まず、プレパルスーテスト刺激間の間隔を変化させて抑制の時間経過を観察しましたが、抑制には少なくとも、20~30msで頂点となる早期成分と、50~60msの後期成分、さらに600ms付近の超後期成分が含まれているとの結果を得ました。PPIがIPSPを反映すると考えて矛盾しないと思われました。責任細胞の候補としては、早期成分はbasket cellによるGABA-A受容器の興奮、超後期成分はMartinotti cellによるGABA-A受容器の興奮をそれぞれ反映すると考えられます。 次にクリック音連発のプレパルスを用いて、プレパルスが惹き起こす興奮に、PPIが依存するのかどうかを検討しました。結果は、プレパルスによる脳応答(興奮性回路)とテスト刺激の抑制が異なる挙動を示し、これらが別の経路を反映することを確認しました。すなわち、微弱なプレパルス呈示は、少なくとも脳磁図で計測する限りにおいては、興奮性回路活性化の閾値付近か閾値以下であるのに、テスト刺激を抑制するのに十分な抑制性回路の活動を惹起したことになります。 微弱なプレパルスはそれ自体は脳応答を引き起こさないのに後にくる強い刺激の応答を抑制するのだから、積極的な抑制を反映すると考えられます。今回の結果はこれと矛盾せず、特定の抑制性回路の挙動を本パラダイムで観察できることを示します。成果は投稿中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本パラダイムで、介在細胞による局所抑制回路の挙動を観察できるかどうかが最大のポイントであったので、ここを確認できた成果は大きい。並行して、遺伝子多型との関連についての研究もほぼ終了し、現在投稿準備中です。
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Strategy for Future Research Activity |
変化関連脳活動を用いたPPIにおいて、時間経過や閾値などの点で明らかに性質の異なる抑制回路が観察されたので、それぞれに関与する介在細胞を同定する研究を開始しています。ヒトの非侵襲的脳機能計測ですから限界はありますが、薬理学的な方法を用いて、受容器のタイプを一部明らかにすることは可能と思われます。また、潜時や閾値の性質から、その介在細胞が主に発火のタイミングを制御する役割を担うのか、それとも錐体細胞の過剰な興奮を抑制するのかについて、考察することも可能と思われます。前者は主に精神疾患において、後者はてんかんにおいて重要になると思われます。 これらをふまえて、複数の回路を別々に評価できる簡易検査を確立したいと考えています。
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Causes of Carryover |
出願の関係で投稿が遅くなり、英文校正費用・出版費用の執行が28年度になりました。原稿は既に投稿中で、28年度にほぼ予定通りの支出になる見込みです。瞬目反射との同時計測がやや遅れており、その分の被験者謝金執行が予定を下回りました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
瞬目反射との同時計測については、薬物投与を合わせた実験に組み込んだ形で計測を開始しており、28年度に終了できる見込みです。概ね、予算執行の点でも、学術的にも、28年度に予定の内容を行うことができそうです。
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