2014 Fiscal Year Research-status Report
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25360020
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
飯笹 佐代子 東北文化学園大学, 総合政策学部, 教授 (30534408)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 「倫理・宗教文化」教育 / ケベック価値憲章 / ライシテ(脱宗教化) |
Outline of Annual Research Achievements |
ケベック州のインターカルチュラリズムに関する調査を、以下に重点を置いて実施した。 1)2013年に提案され、2014年4月の政権交代により廃案となった「ケベック価値憲章」法案をめぐる論争と、現政権(ケベック自由党)による関連政策の動向、2)教育の現場におけるインターカルチュラリズムの実情、3)インターカルチュラリズムを推進する各種団体の役割や活動状況
研究者・学者はじめ、新来移民の多いブラサール市の市長、政治家、学校関係者、文化団体等の主宰者から意見聴取を行うとともに、関連資料の収集を行った。特に教育に関しては、現地の教育関係者の協力を得て、小学校を訪問し、「倫理・宗教文化(ethique et culture religieux: ECR)」の授業に参加することができた。「倫理・宗教文化」は、ケベック州教育省が2008年に初等・中等教育課程に必修科目として導入したもので、倫理的問題への批判的省察と組み合わせながら、キリスト教文化をはじめ、ケベック社会に存在し、また世界的にも主要なさまざまな宗教文化(先住民の精神世界も含む)に関する知識や事象を客観的に学ぶことを目的とする。多くの社会で宗教に対する偏見や誤解に起因する摩擦が顕在化する現在、こうしたケベックの取り組みが持つ意義や課題を考察していく上で、実際の授業を観察できたことはきわめて貴重な経験となった。また、ケベックでも他の西洋社会同様にイスラムフォビア(イスラム嫌い)の高まりが懸念されているが、そのなかで対話や交流を推進するイスラム系ないしはアラブ系組織の取り組みについても調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年9月および2015年2月に現地調査を実施し、小学校での授業の参与観察はじめ、学者・研究者に加えて、多文化社会の最前線で活動する実務家にも意見聴取を行うことによって、より具体的な現状把握が可能となった。また日本では入手困難な資料も収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査をさらにフォローアップしつつ、ケベック州現政権の政策展開を注視していきたい。特に、現在、公表に向けて準備をしているとされる新たな政策声明において「インターカルチュラリズム」がどのように位置づけられているのかに着目する。 それらを踏まえながら、「インターカルチュラリズム」のケベック的文脈における意味や特徴、またカナダ英語圏の多文化主義との実質的な相違と共通点について検討し、さらにはケベックの試みがケベックやカナダの文脈を超えて持ち得る今日的意義についても考察したい。
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Causes of Carryover |
冬期に実施した現地調査の旅費(航空運賃)が、夏季に比べて予想外に安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究をさらに進めるために現地調査を実施し、関係者への意見聴取ならびに現地の実情把握、資料収集を行う。
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