2013 Fiscal Year Research-status Report
世界遺産等における観光客の流入管理に関する理論と地域連携の統合的枠組みの開発
Project/Area Number |
25360033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Seikei College |
Principal Investigator |
国枝 よしみ 大阪成蹊短期大学, その他部局等, 教授 (60465870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉兼 秀夫 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (10301839)
山本 昭二 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (80220466)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 持続可能な観光 / 地域連携 / 世界遺産 / carrying capacity / 観光マーケティング / サービス品質 / 観光地評価 / 消費者行動 |
Research Abstract |
本研究では、世界遺産等の観光地における観光客の流入を管理する理論とその運用のための地域連携の枠組みを、先進地の調査・研究を起点として明らかにすることを目的としている。25年度は(1)持続可能な観光、carrying capacityといったテーマに主眼を置いた文献の研究(2)先進地における環境に配慮した観光開発の取組の研究・調査・分析(3)国内の世界遺産地域における観光による影響等に関し、自治体、観光事業者、観光協会、国等へのヒアリングと調査、を主軸とした。 先行する理論については検討を重ね、世界遺産における宿泊事業者の観光に対する意識について国際地理学会で発表を行った。運用面では、フランスの世界遺産モン・サン・ミッシェルで進行中の持続可能な開発プロジェクトである観光客流入管理のための新交通システム導入について関係者のヒアリングを進めた。次に日本人観光客(個人)を対象に新交通システム導入に対する評価やサービス面の評価を含めた意識調査を現地で実施し、有用な結果を得ることが出来た。海外の観光地において日本人は団体行動が主であるため個人を調査することは容易ではないとされ、現地でも団体調査のみが行われていた。しかし修道院訪問客数の約23%((CRT Normandie 2013)を占める日本人の評価を得たことは、今後フランスや各国の観光客との比較も可能となり、一定の成果が出せたと考えている。この研究結果はフランスの大学研究者と共同でTTRA国際学会において発表する。 次に世界遺産屋久島では、観光が地域に与える影響について自治体、観光協会、国の出先機関等で収集し、研究分担者及び協力者間で議論した。その結果、まず観光事業者の観光に対する意識を探索することが重要であるとして地元の協力を得ながら25年度末に調査を実施した。今後分析を進め、観光客を対象に夏から秋にかけて調査を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、当初の計画どおり観光に関わる先行研究のレビューをそれぞれ進め、順調に推移した。海外先進地については、モン・サン・ミッシェルに観光客の流入を規制する新交通システムが導入され、当該サービスに対する日本人観光客の評価やサービス全般の評価を含めた意識調査を計画していた。日本人は旅程が厳しく管理され、団体行動が常であるため個人の調査は、現地でも実施されていなかっただけに困難が予想された。結果、慎重に準備を行い調査を遂行することができたことは、今後の国内の研究の参考にもなると思われる。またフランス人及び他の外国人との比較も可能となるであろう。国内の世界遺産等に関しては、当初全国の自治体に対して調査を予定していたが、準備のため事前のヒアリングを先行して実施した。観光客の流入規制に関する情報収集は3箇所の世界遺産を保有する奈良県、今後世界遺産を目指す堺市において現在の課題の聞き取り調査を行った。また各地の世界遺産を文献等から調べた結果、文化遺産よりも自然遺産を保有する地域の観光客流入に関する課題がより深刻ではないかと推測された。そこで世界自然遺産登録20周年となる屋久島を選定し関係自治体、国、観光協会等のヒアリングを行った。屋久島では、長年にわたる環境への影響、規制の是非などの課題を確認した。そのため予定していた観光客の調査に先立ち、観光事業者の観光や環境に対する意識を探索することが重要と考え25年度末に実施した。従って25年度は、概ね順調に計画が進められたといえる。なお、屋久島における観光客の意識調査は今後夏から秋にかけて行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は世界遺産吉野山(奈良県)において、観光客の意識調査の実施とその結果を基に自治体や観光機関、国、民間事業者等における観光客の流入規制運用のための実務上の課題を情報収集する。 屋久島については、観光事業者対象の調査結果を分析し、論文にまとめ公表する予定である。同時にその結果は協力を得た地元関係者をはじめ、地域と共有する。この結果を踏まえ、夏から秋にかけて観光客を対象とした調査を実施する。その準備のために地元の関係者と十分なヒアリングを行い地域の課題解決となるよう準備を研究分担者と共に行う。 次に岐阜県の世界遺産白川郷への聞き取り調査を予定している。また、全国の自治体調査の準備も進める。その他フランスにおける研究結果及び吉野山、屋久島に関する論文は順次執筆し公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は屋久島の調査について研究代表者および研究協力者が対応し、研究分担者は26年度に現地調査に参加することとしたため未執行となった。 26年度は屋久島の観光調査を現地にて行う予定であり、それに伴う往復の航空運賃、宿泊費、現地での移動費用を見込んでいる。
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