2013 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける女性研究者のジェンダー分析および比較研究
Project/Area Number |
25360043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 特任教授 (00185513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
財部 香枝 中部大学, 国際関係学部, 教授 (00421256)
河野 銀子 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (10282196)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 女性学生 / 女性研究者 / 統計調査 / 性別統計 / 東アジア |
Research Abstract |
7月、11月、2月に研究会を行った。7月の研究会は、11月に開催される東アジアSTS学会(EASTS)と日本科学社会論学会年会(JSSTS)の両方に参加する準備を進めた。EASTSは2012年には韓国ソウルで開催されており、韓国のLee教授が中心となってラウンド・テーブルStatistics of Women in Science and Technology Education : Data from Taiwan, Japan, and South Koreaを開催した。このとき3カ国のデータ収集に不備があることが明確になり、2013年には、その摺り合わせを行うことに全力を注いだ。東アジアでの合同の研究会というのは珍しくないが、多くの場合それぞれの国の状況報告に終わっている。本科研費の主目的は各国のデータをEUのShe Figuresのカテゴリーに合わせることである。 9月には小川が2013ConWiST(台北)に招待され、同地で台湾や韓国のメンバーとさらに打ち合わせを行った。そして今年度の主要行事である 2013, the 11th East Asian STS Conference (東京工業大学11月)に参加し、本科研費プログラムに関係するメンバー全員でワークショップを開催した。学会開催前日に研究会をもちコメンテーターとして迎えたニューデリーのNISTAD(National Institute of Science, Technology and Development)の上席研究員のニーラム・クマール氏も交えて活発な議論を行った。韓国と台湾からは本科研費の研究協力者であるEunkyoung Lee氏とYenwen Peng氏を招聘した。 このEASTS会議に引き続き東工大でJSSTSの年会が開催され、こちらは一般講演の部で、河野・財部の両氏が発表を行い、フロアーとの活発な議論を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EASTSおよびJSSTSの両方を通して一番の問題は、日本の教員統計資料の不備である。学生については3カ国ほぼ横並びの比較を行うことができた。教員については日本に年齢層別の統計はあっても、分野別や職階別の性別統計が存在しない。これは学会でも大きな驚きを齎した。こうした致命的なデータ欠落をいかにして他の情報で補っていくかは次年度以降の課題である。折しも2013年11月29日を期限として総務省政策統括官(統計基準担当)による意見公募(パブコメ)が行われ「公的統計の整備に関する基本的な計画」について意見を述べる機会があった。そこで、私たち科研費グループは以下の意見を提出した。 『教員統計調査』で必要なのは、垂直方向(職位)と水平方向(分野)の性別分離を示すデータである。【男女別】【分野別】【職位別】の3要素がそろうデータが必要であるが、わが国ではこれら3要素が揃うデータは現在のところ存在せず、他国との比較が不可能であり、早急な改善を望むものである。 JSSTSの成果については財部香枝、河野銀子、小川眞里子、大坪久子「東アジアにおける女性学生の専攻分野に関するジェンダー分析―日本・韓国・台湾の比較をとおして―」を『貿易風』(中部大学国際関係学部論集)に投稿した。公表は26年度4月。EUは民間企業で雇用された女性研究者(WIR: Women in Industrial Research)にも十分なアプローチを進めつつあり学ぶべき点が多い。これについては、小川が年度末の2月ブリュッセルにEU研究総局の女性研究者担当関係部門を訪問し、多くの資料を貰い受け、これを本研究メンバーに発送して情報を共有することができた。次年度以降これらEUの資料も活用して分析の指標をさらに広げるべきと考えている。 現在までの達成度は、女性学生についてはおおむね達成できたと考えている(国内学会、国際学会での口頭発表、ならびに和文の論文投稿)。
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Strategy for Future Research Activity |
統計調査の韓国・台湾・日本の比較は、本科研費の研究目標の要である。教員の統計データ不備については、元データはあって公表していないだけかもしれず、実際に直接文科省に問い合わせるべきであると、複数の文科省関係の事情に詳しい人物からアドバイスを受け実際に問い合わせてみた。しかし、回答は「教員の性別統計はそもそも全く存在せず、したがって元データの開示はあり得ない」との回答を得た。 このような状況を踏まえて、2012年に行われた男女共同参画学協会連絡会の大規模アンケート調査の集約結果が2013年末に公表されたので、それで文科省統計の不備を補うことが出来ればと模索中である。そして教員での3国比較は概略部分にとどめ、今後は3国それぞれに齎された影響を精査しあう中で、そのような女性学生や女性研究者の差異を生じる社会的、文化的背景を探ることに傾注すべきであると考える。それでもインドのクマール氏からは、本研究のユニークな点を評価され同氏が編集委員を務める国際誌への寄稿を勧められた。26年度8月河野研究分担者がハイデラバードで開催される国際会議の席上で研究発表を行う予定である。 教員統計調査の不備は、今後日本が世界に向けて情報発信をしていこうとする場合に重大な欠陥である。しかしこのような統計の性格上これは全国規模で文科省がする以外になしえない統計であり、個別研究者ではいかんともしがたいものである。もちろん研究者は教員に限られることではなく、民間企業にも多くの研究者が活躍しているのであるが、日本に限らすそれらの人材の実態把握は押しなべて難しいものである。
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