2014 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける女性研究者のジェンダー分析および比較研究
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25360043
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小川 眞里子 三重大学, 人文学部, 特任教授(教育担当) (00185513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 銀子 山形大学, 教育文化学部, 教授 (10282196)
財部 香枝 中部大学, 国際関係学部, 教授 (00421256)
横山 美和 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 研究員 (70725267)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 女性学生 / 女性研究者 / She Figures / 分野別 / 男女別 / 職位別 / 統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には女性学生の実態を、韓国、台湾とともに過去10年間ほど調査して、その成果を東アジアSTS学会で、3国共同でワークショップを開催し、日本科学社会論学会では主として日本の問題点について報告を行った。これを受けて、26年度は、女性研究者に焦点を定め研究を行った。 問題はデータの擦り合わせであるが、日本には女性研究者について、【職位別】【男女別】【分野別】の3要素を同時に満たすデータが存在せず、韓国や台湾と比較することができないというのが現状であった。そうした現状は、学会発表(昨年度の日本科学社会論学会)や論文(昨年度『貿易風』掲載)で訴えても、あるいはパブリック・コメントの機会をとらえて指摘しても事態は改善されぬままであった。そこで私たち科研グループは、ジェンダーに関係するデータを提供している、文部科学省生涯学習政策局と内閣府男女共同参画局のそれぞれの担当者と面談して、直に現状の不備とそれらの改善を訴えた。その中で、ジェンダー統計の重要性にも気づいていただくことができ、2つの局が協力して改善へ踏み出してもらえる見通しを得ることができた。これは大きな成果といってよいだろう。その概要は『科学技術社会論研究』に、さらに問題の所在などを詳しく論じたものを『人文論叢』(三重大学人文学部紀要)に掲載した。 もう一つの大きな成果は、昨年度3国の共同作業で完成した統計的研究を、科研メンバーの一人河野がハイデラバードで開催された世界女性会議で研究発表を行ったことである。統計データが早くから整備されている欧米の国々からは、東アジアからのデータ発信が待ち望まれており小規模ながら She Figures をめざす研究グループの存在をアピールできた。このような国際的な発信は待たれているものであり、引き続き次年度も行っていく予定である。なお、この成果を国際誌に発表すべく努力しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の女性研究者に関するデータの不備は、それらが問題なく揃っている韓国、台湾の研究協力者には大きな迷惑をかけていると思う。しかし、これが日本の現状であることを広く認識してもらう機会となり、実際に政府機関にも働きかけて現状の改善へ向けて1歩を踏み出すことができたのは、本研究の目標達成の不可欠の要素を一つ達成したことになると思う。 データがないからできないのではなく、国際的な水準からみて整備すべきデータの必要性をデータ製作者に知らせ、意見交換のできるつながりを作ることができたのは、長い目で見て重要な成果を上げ得たと評価するものである。したがって、今後政府機関の対応が順調に進むのであれば、この点については当初の計画以上に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度そして昨年度にそれぞれ女性学生、女性研究者について統計を中心とする韓国、台湾、日本の比較研究はおおむね達成できた。ただし、女性研究者については、日本のデータの不備が大きく響いていることは否めない。 今後は、データの整備を追いかけて様々な滞ってきた分析を進めることが可能になれば、非常に望ましく好ましいことである。ただし、すぐには望めないことなので、今後は女性学生や女性研究者の実態の違いを踏まえた社会的背景の分析も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
河野銀子氏にインドの学会参加費用として分担金を割り振ったが、彼女は海外学会発表助成金を別途獲得したため、一部の費用を翌年度に回した。 横山美和氏については、2015年初めから産休に入り、来年度の韓国における国際会議参加費用の補てんを考え、繰り越しをわずかながら行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は、2015年度のソウルでの学会参加費用として消化できるものと考えられる。
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