2015 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末~第二次世界大戦期のフランス倫理学の展開とその現代的可能性
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25370002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村松 正隆 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (70348168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 浩二 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (20181901)
川崎 惣一 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (30364988)
村山 達也 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)
越門 勝彦 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (80565391)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンリ・ベルクソン / ポール・リクール / サルトル / ジャン・ナベール / ルイ・ラヴェル / 根源的肯定 / 全体的人間 / フランス倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は2回の研究会を開催した。第一回目は北海道大学にて7月11日、12日に行った。11日は、本研究の参加者全員が、研究進捗状況を報告した。12日は、宮代康丈氏(慶應義塾大学)の講演、「徳と利益 ― 19世紀フランスのカント派における合理的エゴイズムの問題」ならびに、北垣徹氏(西南学院大学)の講演「プラグマティズム・インパクト―生と行動の思想」を開催した。宮代氏は19世紀フランスにおけるカント主義の流入を論じつつ、義務論と功利主義の微妙な交差のありさまを浮き彫りにした。また北垣氏は、ルヌーヴィエからデュルケムに至る当時の社会学的思考にプラグマティズムが及ぼした影響を明らかにしつつ、この思想の新たな特徴を明示した。 二回目の研究会は、フランスのストラスブール大学にて、同大学哲学科のLaurent Fedi准教授との協力の下に開催された。本研究会においては、鋳物美佳氏(ストラスブール大学)、宮代康丈氏、Laurent Fedi准教授が発表を行い、本研究の参加者全員もそれぞれの研究成果を発表した。それぞれの発表の概略を述べる。村山は、ベルクソンが従来の道徳学説に向けた批判の意義を、レヴィ=ブリュールの思想と関係づけつつ、再評価した。村松は、ルイ・ラヴェルのナルシシズム批判の意味を、彼の存在論との関連の中で明らかにした。また、川崎は「悪」を巡るリクールの思考の変遷を明示し、越門は、ナベールとリクールの悪を巡る議論を緻密に比較することで、それぞれの特徴を浮き彫りにした。水野は、1960年代のサルトルの「第二の倫理学」に着目し、「主体性」、「歴史的実践」、「倫理的案出」、「無条件的未来」といった概念の意味を整理しつつ、具体的歴史のなかで生きる「全体的人間」という概念を明らかにした。 以上の作業により、19世紀末から1960年代のフランス倫理学の特徴のいくつかが明らかにされた。
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Research Products
(14 results)