2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370028
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
星野 勉 法政大学, 文学部, 教授 (90114636)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 解釈学 / 翻訳 / 異文化理解 |
Research Abstract |
「翻訳」は、異文化を理解し、受容するにあたって、きわめて重要な役割を果たしている。それには、二つの側面がある。一つは意味の置換であり、他方は意味の創造である。意味の置換であるかぎり、「翻訳」は、言語・文化間の何らかの同一性を当てにしながら、異なる言語・文化間に一対一対応の等価な意味を見出そうとする努力である。しかし、現実には、「翻訳」がもとの意味の忠実なコピーであることはありえず、原文と翻訳文との間には、意味のズレがつきものである。しかも、このズレが新しい意味の創造をもたらすのである。この「翻訳」に見られる、目指されるべき理念としての意味の等価性と創造的なズレ、この辺りに、同一の準拠枠内ではなく、異なる準拠枠「間」での「解釈学」の可能性を探るためのヒントが隠れていると思われる。 そこでまず、ハイデガー、ガダマーの「解釈学」と和辻哲郎の「解釈学」をテクストに即して比較、検討しつつ、「翻訳」による文化転移における創造的なズレを解釈学的に解明する作業に着手した。この研究は次年度も継続する予定である。 また、2013年11月3日、アルザス欧州日本学研究所での国際シンポジウムでは、思想史という観点から、「日本思想史における仏教、儒教の位置」と題する研究発表を行った。この研究は、日本の思想における仏教、儒教の位置づけと、ヨーロッパ各国の思想・文化におけるギリシャの哲学・文学(ヘレニズム)とキリスト教(ヘブライズム)の位置づけとの比較研究というかたちで、次年度に引き継がれる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記したように、本研究の目的である、同一の準拠枠内ではなく、異なる準拠枠「間」での「解釈学」の構築に向けて、「翻訳」を手掛かりに、ある程度の見通しを得ることはできた。 また、この問題に、「日本思想史における仏教、儒教の位置」という観点からも、アプローチすることができた。 ただし、この作業を外国の日本文化研究者との異文化間対話の場に身を置きながら推進するという点では、なかなか異文化間対話の機会を設定することができず、計画通りとはいかなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にも記したが、ハイデガー、ガダマーの「解釈学」と和辻哲郎の「解釈学」をテクストに即した比較研究、「翻訳」による文化転移における創造的なズレの解釈学的な解明作業を継続する。 また、日本の思想における仏教、儒教の位置づけと、ヨーロッパ各国の思想・文化におけるギリシャの哲学・文学(ヘレニズム)とキリスト教(ヘブライズム)の位置づけとの比較研究を展開する。 そして、この作業を外国の日本文化研究者との異文化間対話の場に身を置きながら推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究実施計画では、この作業を外国の日本文化研究者との異文化間対話の場に身を置きながら推進するとあるが、当方と海外研究協力者との予定の調整がつかず、異文化間対話の機会を設定することができなかった。 平成26年度には、積極的に海外研究協力者との異文化間対話の機会を設けて、それに次年度使用額を充てる予定である。
|