2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370028
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
星野 勉 法政大学, 文学部, 教授 (90114636)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 解釈学 / 和辻哲郎 / 異文化理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年11月にアルザス欧州日本学研究所で開催されたシンポジウムでの発表をもとに纏められた論文「徳川政治体制と朱子学」では、徳川政治体制の特異性を、その思想的な後ろ盾である朱子学の受容と変容と言う観点から明らかにした。というのも、徳川政治体制は、戦国以来の武力を否定することなく保持しながら、「天下泰平の世」を実現するという、世界史的にも特異な政治体制であったが、武力と泰平、この矛盾する原理からなる特異な政治体制に言語的表現を与えたのが、朱子学であるからである。 2014年11月にアルザス欧州日本学研究所で開催されたシンポジウムでの発表をもとに纏められた論文「グローバリゼーションと〈風土〉」では、「生活空間」の均質化を地球規模で強力に推進しているグローバリゼーションという世界の趨勢を一方で見据えながら、あえて「生きられた空間」である「風土」というローカルな視点に定位し、そこから日本文化やアイデンティティの問題にアプローチした。そのさい、有力な手掛かりを与えてくれるのが、和辻哲郎の「風土」論である。和辻哲郎の『風土』には、「風土」を人間存在の不可欠の構造契機として捉える視点と、比較文化論的な視点とが認められるが、これらの視点は、グローバリゼーションという普遍化傾向のなかで、「風土」に根ざすローカルで特殊な文化をどうとらえ返すかを考える上できわめて有効であると思われる。 本研究の大きな枠組みは、文化転移における創造的なズレの解釈学的な方法による解明である。本年度の研究成果を、「間の解釈学」の構築へと結実させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和辻哲郎の「風土」論をベースに、文化の特殊性を介してこそ達成される普遍性の可能性が明らかになりつつある。しかも、それがグローバリズムとは趣きを異にする点が重要である。これは、「間の解釈学」の構築を推進する上で、きわめて有効な手掛かりとなりうる。
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Strategy for Future Research Activity |
和辻哲郎の「風土」論、ならびにそこで駆使されている「解釈学の方法」が、「間の解釈学」を構築していくうえで、有効であることが明らかになりつつある。他方で、文化転移における創造的なズレの解釈学的な解明作業も進行しつつある。そこで、両方向の研究を結び付けることによって、「間の解釈学」の構築へと研究を展開する。 もとより、この作業を外国の日本研究者との異文化間対話の場に身をを置きながら推進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額30,446円が生じたのは、直接経費「その他」の一部を他経費でまかなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の必要からやや物品費(図書費)に多くの支出を充てざるを得ないが、当初の交付決定額の内訳に添うように努める。
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