2016 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of hermeneutics of 'between' for the cross-cultural understanding
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25370028
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
星野 勉 法政大学, 文学部, 教授 (90114636)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 解釈学 / 風土 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究成果は「人間と自然の身体を介する関係態としての「風土」」(『法政大学文学部紀要』第73号、2016年9月、1-12ページ)である。 本研究成果は、和辻の唱える「風土」が身体を介する人間と自然の関係態であるという新しい解釈を提示するものであるが、このように解釈された「風土」概念から、人間と自然を二項対立的なものと捉え、自然そして私たちが生きている世界を均質な純粋空間と捉える、西洋の近代哲学・近代科学の孕む問題点が明らかにされた。 最終年度の研究成果から研究期間全体の研究課題である「異文化理解に向けての「間の解釈学」の構築」をとらえ返すと、翻訳の可能性と不可能性にも認められるように、異文化理解のためには、一方で異文化間の解釈枠組みを可能な限りすり合わせる努力と、他方でそれらをすっかり重ね合わせることができないことの認識とが重要であることが明らかとなった。つまり、異文化は、水と油のように全く排斥し合うものでもなければ(そもそも、日本文化自体が、明治維新以前は中国、朝鮮半島から、そして、明治維新以降は西洋から、異文化を取り入れることで成り立っている)、すっかり同一化されうるものでもない。そもそも違ったものであるからこそ異文化から学ぶことができるのである。 グローバリゼーションとは、生活空間の均質化でもあり、風土的、文化的な個性を希薄化させる傾向がある。しかし、そうしたグローバル化の時代に特定の風土で生まれ育った人間が世界に対して貢献できるとすれば、それは無色透明のグローバル人としてではなく、あくまでも「開かれた」という条件付きではあるが、特定の伝統を背負った個性人としてであろう。そして、「間の解釈学」もこうした方向性において構築されうるに違いあるまい。
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