2013 Fiscal Year Research-status Report
現代における自由意志の問題―理論と実践の統一を目指して
Project/Area Number |
25370031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
村田 純一 立正大学, 文学部, 教授 (40134407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 聖一 立正大学, 文学部, 講師 (00503864)
湯浅 正彦 立正大学, 文学部, 教授 (70247188)
田坂 さつき 立正大学, 文学部, 教授 (70308336)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自由意志 / 決定論 / 選択 / 生態学的観点 |
Research Abstract |
昨年度は、計画通り、公開の3回の研究会を実施した。それぞれの機会に発表者の議論をもとに、ニーチェの自由論、ドイツ観念論の自由論、生態学的観点からの自由論など、さまざまな観点を考慮した自由論の検討がなされた。 その中で特に話題になったもののひとつは、自由な行為とは「理由なき自己決定」として実現されるという高山守氏によるテーゼである。一見すると、自由な行為は、決定されていないということから考えて、行為の最終決定の場面では、なんらの理由なしに選択がなされるはずであり、実際、そうしたことが行われていると考えることが自然のように思われるかもしれない。 確かに明確な選択肢を前にして、あれかこれか、という仕方で選択に迷い、最終的にははっきりした根拠なしに選択し、行為に及ぶということもないわけではないだろう。しかし、そうした場面は、日常生活の中ではまれであるし(日常生活とはそうした「深刻な」選択が問題にならない場面と言い換えることもできる)、まただからといって、日常生活の中での行為が自由でないということにはならない。こうしてみると、「理由なき自己決定」という考え方は、ある特殊な場面を典型例とする偏った見方ということになる。むしろ、自由な行為の典型例を日常生活の場面に見ることによって、伝統的哲学の一面的な見方を超えて、より広い観点から自由の問題を捉えることが可能となるように思われる。また、そうした日常生活の例をモデルにすることによって、生態学的観点の有効性も浮き上がってくると思われる。もちろん以上はひとつの見方であるが、少なくともこうした論点を手がかりに自由の問題を広い視野から考えていくことができるのではなかろうか。そしてここから自由概念の多次元性という観点が生まれてくるが、これが今後のひとつの検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた3回の研究会を実施することができ、その中から、自由意志と決定論の問題を考えるさいのひとつの鍵になる論点を取り出すことができた。それは、先の「研究実績の概要」に書いたように、ドイツ観念論など伝統的な自由意志論では共通に見られる「理由なき自己決定」という観点をめぐる議論を行うことによって、ひとつの重要な問題点を抉り出すことができたからである。 分担者の湯浅は、「理由なき自己決定」という観点をカントの自由論の文脈で議論し、竹内は現代行為論の枠内で実践推論との関係で議論し、また、田坂は、障害者の自己決定という言葉のもとで生じている問題として議論した。こうした多様な視点からの議論の進展が見られた点が成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度見出した自由意志をめぐる重要な問題点をさらに掘り下げると同時に、最初の計画にあるように、より実践の場面に即した仕方で自由意志論を考える。特に患者の自己決定がさまざまな場面で問題になっている医療現場、介護現場、などを取り上げて、より具体的に議論を展開する予定である。そしてそうした議論を通して、「自由概念の多次元性」という観点の有効性を吟味していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担者の湯浅と竹内が2014年度に旅費を使用する予定で、比較的余裕のあった2013年度の使用を抑制した。 主には、日本哲学会や、科学哲学会などの際に研究打ち合わせなどが予定されており、そのために旅費で使用する予定である。
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