2014 Fiscal Year Research-status Report
現代における自由意志の問題―理論と実践の統一を目指して
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25370031
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
村田 純一 立正大学, 文学部, 教授 (40134407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 聖一 立正大学, 文学部, 講師 (00503864)
湯浅 正彦 立正大学, 文学部, 教授 (70247188)
田坂 さつき 立正大学, 文学部, 教授 (70308336)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自由意志 / 自己決定 / 規範 / 臨床哲学 / 日常性 / 決定論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.昨年度の研究で見通しをつけた自由意思をめぐる中心的問題をさらに展開し、それらの知見をさまざまな機会に発表し議論に付した。その問題とは、自由意思のあり方を「他行為可能性(ほかの仕方で意志し行為できた可能性)」に見出す見方、すなわち選択可能性を重視する見方はどこまで自由な行為理解にとって本質的なのかという点にあった。自由を他行為可能性ないし選択可能性のみには見ない見方としては、カント的見方の場合のように、規範を導き手とする伝統的見方が主流であった。それに対して、そのような明確な規範を意識化する場合ではなく、日常的行為のほとんどがそうであるように、日々の習慣や文化的形式などに導かれた行為の場合を重視することによって、他行為可能性を重視する見方への根本的批判が可能になる点が示唆された。この後者の見方をより説得的なものとするために、戸坂潤の日常性を中心とする哲学観、さらには、日常性自身が苦労して獲得されねばならないことを明確に示した(自身が障害者である)熊谷晋一郎氏による「自立」概念の新たな解釈の提示などが参考になることが示された。 2.今年度は、1のような理論的研究のみならず、障害者の経験など具体的な事例を参考にした臨床哲学的研究、ならびに、そうした研究を大学での授業の場で用いて学生の関心を喚起する試みがなされた。2015年の11月には、重度のALS患者でありながら社会的活動を続けられている舩後靖彦氏による講演会を、授業と組み合わせて企画し、自由の問題が障害を持つ人間にとって持つ意義が議論された。とりわけ、医療のさまざまな場面で登場する「自己決定」概念のもつ危うさが浮き彫りになった。そして、この問題をさらにケアの倫理と結びつける可能性も探られた。ALS患者の方々との哲学対話の試みはそのほか、大阪大学や和歌山でも、学生とともに試みられ、自由の問題の実践の現場での意味が探求された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の大きな目的のひとつは、自由と決定論という仕方で議論される伝統的な自由意思をめぐる議論の枠組み自体を検討して、それに代わる見方を探ることにあった、伝統的見方を超えるためには、自由の中心を「他行為可能性」ないし選択可能性に見る見方を検討する必要がある。本研究では、この見方を批判する観点として、「日常性」という概念ないし観点の重要性に注目している。日常生活の行為は、ほとんど意識的選択を通してなされるものではなく、他行為可能性があると明示的にいうことは簡単ではないが、自由な行為の典型例とみなすことができる。ただし、日常的行為を遂行している場合には、多くの行為が同等の程度で選択肢になるのではなく、むしろ選択肢はごく限定されている。にもかかわらず、そうした行為のあり方は単に機械的になされているのではなく、むしろ創造性を伴っていると考えられる。こうした行為のあり方を典型例としてみなすことによって、自由と決定論の二律背反の枠から脱却できると考えられる。 2.本研究のもうひとつの目的は、自由の問題を、抽象的議論のレベルにとどめるのではなく、さまざまな具体的場面に即して考察する点にある。この点で、ALS患者の舩後靖彦氏の講演を、授業形態のなかっで実現できたことは、学生たちへ刺激を与えるという意味でも、大きな成果であった。そのほか、大阪大学や和歌山などで行われた臨床現場での自由の問題が議論されたことも、「理論と実践の統一」を課題とする本研究にとっては大きな成果であった。とりわけ、日常生活を実現する行為の持つ「創造性」に注意を向けるには、障害者の方々の経験に基づく視点が重要であることを確認できたことも大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた仕方を継続しながら、2015年度は最終年度なので、研究の総まとめを行うことを目指す。具体的には、年度末に、研究代表者、分担者全員の発表を含む研究会を組織し、多くの研究者からの批判を仰ぐ機会を設ける。また、その準備を兼ねて、さまざなな研究者を招いた研究会などを個別に継続的に開いて、研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
1.2015年度に海外で開催される学会での発表のために海外出張旅費を確保するため 2.2015年度に複数の外部の方を呼んだ研究会を予定しているための、招聘旅費と講演謝金を確保するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用目的は、上記の理由の欄に述べたとおり。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] The paradox of pain experiences2014
Author(s)
Murata, Junichi
Organizer
The 6th meeting of PEACE(Phenomenology for East Asian Circle)
Place of Presentation
Chinese University of Hong Kong, Hong Kong
Year and Date
2014-05-20 – 2014-05-23
Invited
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