2016 Fiscal Year Research-status Report
スティラマティの倶舎論注釈書『真実義』梵文写本第一章の研究
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25370062
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
小谷 信千代 大谷大学, 文学部, 名誉教授 (40141494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本庄 良文 佛教大学, 仏教学部, 教授 (00115932)
加納 和雄 高野山大学, 文学部, 准教授 (00509523)
松下 俊英 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (10612765)
福田 琢 同朋大学, 文学部, 教授 (20278261)
上野 牧生 大谷大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70460657)
秋本 勝 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80202547)
松田 和信 佛教大学, 仏教学部, 教授 (90268128)
箕浦 暁雄 大谷大学, 文学部, 准教授 (60351251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スティラマティ / 安慧 / 『倶舎論』 / アビダルマ / ヴァスバンドゥ / 世親 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、昨年度に引き続き、スティラマティによる『倶舎論』注釈書『真実義』サンスクリット写本のうち、第一章の解読を継続した。年度の途中にて、年度内に予定していた六葉の解読が完了したため、写本の冒頭に戻り、冒頭箇所からテクスト校訂の再点検を開始した。その結果として、『倶舎論』の冒頭箇所について、他の注釈書を遥かに凌ぐ質と量とを兼ね備えたスティラマティの注釈内容を明らかにすることができた。 それに付随する成果として、スティラマティが博引する韻文(総括偈)の出典の多くを比定することができた。また、出典が比定できなかった典拠不詳の韻文は、これまでの先行研究において全く未知のものであるが、本研究はその韻文の構文を詳細に分析し、『倶舎論』本文およびスティラマティによる注釈内容との整合性を鑑みた上で、韻文の読みを確定した。これらの成果は将来における出典比定を容易にすると推測される。 『真実義』の冒頭箇所では、『倶舎論』が作成された「目的」について、他の注釈書には見られない、極めて詳細な議論がなされている。また「目的」に加えて「主題」「関係」など、後代の文献において定式化する「論書の序説」について丁寧な記述がなされている。そのため、当該年度に再点検を行った箇所は、仏教論書の冒頭に見られる、いわゆる「造論の意趣」の研究対象としても、重要な用例のひとつと認められる。 なお、本研究は、2017年度までの研究期間の延長を申請した。延長を申請した理由は、上述したとおり、研究計画において予定していた写本の解読が完了したため、写本の冒頭に戻り、冒頭箇所から再点検を開始したためである。したがって、2017年度においても、再点検を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究方法および研究計画に沿って、定期的に研究会を開催して研究課題を遂行した。その結果、研究計画は順調に進展した。
研究計画においては各年度六葉の解読という目標を掲げたが、当該年度も、当初予定していた六葉の解読を完了することができた。この点から、研究計画がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでと同様、サンスクリットテクストとその試訳を準備したうえで、大谷大学にて定期的に研究会を開催し、共同で検討することを繰り返すというかたちで、研究を遂行する。
具体的には、研究代表者である小谷信千代がサンスクリットテクストとその試訳を用意する。同時に仏教写本の専門家である松田和信と加納和雄が写本画像を精読し、そのテクストに修正を加える。続いてアビダルマ研究を専門とする小谷、本庄良文、秋本勝、福田琢、上野牧生、松下俊英に、松田と加納を加えたメンバーが、アビダルマ教義学の議論を整合的に解釈して、テクストと試訳に修正を加える。その過程で必要となる『順正理論』との比定作業については小谷が、引用経典の出典比定作業については小谷、本庄、松田、上野が担当する。この手順で議論を重ねてテクストを確定し、DIplomatic EditionとCritical Edition、および日本語訳を作成する。
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Causes of Carryover |
物品費として予定していた予算を執行しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として予定していた予算を執行する予定である。
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