2014 Fiscal Year Research-status Report
『啓蒙の弁証法』読解と、その前史・後史をふまえた、近・現代「社会思想史」の刷新
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25370080
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高幣 秀知 北海道大学, -, 名誉教授 (00146995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ルカーチ / アドルノ / ホネット / ルソー / 韓相震 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度報告書にその概略を記した論稿「ルカーチvs.アドルノ再考」(400字詰め130枚余)については昨年七月頃ようやく成稿をみるに至り、同八月には高幣「アドルノvs.ルカーチ」として、徳永恂大阪大学名誉教授の「アーレントとハイデガー」とともに、北海道大学思想史研究会において講演集会をもつことができた。たいして、その公表については出版上の諸事情によりとどこおっており、苦慮しているところである。 こうしたなか、本年二月から三月にわたりフランクフルトへ滞在してゲーテ大学教授・社会研究所長アクセル・ホネットと面談して当論稿に言及したところ、Jahrbuch der Internationalen Georg Lukacs Gesellschaftへ寄稿するよう推められた。ドイツをはじめ欧米ではルカーチ-「ブダペスト学派」とアドルノ-「フランクフルト学派」との関係というテーマは近年あらためてクローズ・アップされてきており、また高幣がこれまでに探索してきた原資料は世界的にみても極めて貴重なものに属しているからである。私としてはこれまでの研究を集成し、一連の討議にたいして論戦的な寄与をなすべく、改稿への準備作業にはいっている。 いまひとつの研究課題「社会思想史論選」について、とりわけその焦点のひとつをなす「ルソー問題」については、先頃のルソー生誕300年を期しておおくの論説があらわれはしたところであるが、レオ・シュトラウスやハンナ・アレントなどによる恣意的ともみえる解釈にたいして、ルソーにおける社会契約を体制論的なものとしてではなく運動論的なものとして把握しなおす必要がある、しかし「ルソー問題」はそこになお尽きはしない、という認定が当面の段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『啓蒙の弁証法』読解プロジェクトについては、平凡社編集部の確約のもと、ひとまず本年十二月頃を目処に参画者の原稿を集約する予定にある。細見和之大阪府立大学教授と高幣の共編著とする。
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Strategy for Future Research Activity |
以上、当初の研究計画からすれば、これまでに成果として活字発表されたものはすくないとはいえ、その内実においてはそれなりの成果を得ながら進行している。現在、計画の三年度目、最終年度の当初にあたり、計画期間の延長、あるいは新規計画の再編を必要とするだろうことが予期されるところである。また本年十一月頃には、韓国ソウル国立大学韓相震教授の招待により同大学にて講演する機会をもつ予定である。
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Causes of Carryover |
『啓蒙の弁証法』読解プロジェクトについて、予定していた合同研究会を開催するに至らなかったという事情による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は、『啓蒙の弁証法』読解プロジェクトにかかわる研究集会を複数回開催する予定である。
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