2015 Fiscal Year Research-status Report
『啓蒙の弁証法』読解と、その前史・後史をふまえた、近・現代「社会思想史」の刷新
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25370080
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高幣 秀知 北海道大学, -, 名誉教授 (00146995)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 啓蒙の弁証法 / 東アジア批判理論 / 構想力の論理 / 社会思想史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究については、先行する二年間の基礎の上に、一定の成果をあげることができた。活字業績としては、 1)『季報唯物論研究』132号「物象化論論争」特集に「疎外・物象化批判と戦略問題」、 2)北海道大学とソウル国立大学の合同シンポジウム"Compressed Modernity and Liberalism in Asia"に”Situations in Japan: Toward Critical Theory in East Asia”、 3)『週刊読書人』(3107号)への書評「ヴァルター・ベンヤミン『新訳・評注 歴史の概念について』(鹿島徹訳)」、以上がすでに活字化されたものであるが、 4)国際ルカーチ協会年報に寄稿すべく、"Zum weiteren Beitrag ueber Lukacs vs. Adorno Problem"を執筆途中であり、凡そのところ完成している。提出最終期限は本年五月末である。 研究課題の中心の一つをなす『啓蒙の弁証法』解読については、平凡社編集部の事情、共編者の都合などにより、現在のところ2016年末を共同執筆者全員の原稿提出締切期限としている。その後、一定の編集期間を必要とはするが、28年度末には完結する予定である。研究成果第二に挙げた北海道大学・ソウル国立大学合同プロジェクトでの発表により、今後の共同研究への一定の方向づけは確認することができたと考えている。今後にわたり、この成果をいまひとつの研究課題の中心をなす『社会思想史学論選』へと統合すべく、日本社会思想史上の、あるいは日本哲学史上の核心的な論点を論究する見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論稿「ルカーチvsアドルノ問題再考」については、400字×140枚の中編論文が完成している。掲載雑誌についても特定することができている。完成直前のドイツ語論文は同様のタイトルであるが、新しい論点をも盛り込んだ別稿と考えている。 ソウル国立大学での英文発表論稿については、包括的な視座を提示することに努めたところであり、個々の論点については今後詳細に論究を進めていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のソウル国立大学での発表論稿を起点として「東アジア批判理論の理念と現実」という課題設定のもとに、『社会思想史学論選』第四部への論稿を積み重ねていきたい。同じく『論選』第二部「デモクラシー論」については、ルソー研究の現状・成果を踏まえることは言うまでもなく、ホネットの新しい試み"Das Recht der Freiheit"をも含んだ研究動向をも視野に収めるものとする。
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Causes of Carryover |
ドイツ語論文を28年度5月末までをもって完成するため、予備の図書費ならびに諸経費として次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文執筆のために、主に図書経費、ならびにその他諸経費として使用する。
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