2016 Fiscal Year Research-status Report
欧州の木彫表現についての研究,および日本の木彫表現との比較
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25370157
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大原 央聡 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80361327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河西 栄二 岐阜大学, 教育学部, 教授 (60302402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 彫刻 / 木彫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では欧州において、石の文化のなかで育まれた木彫表現について調査・研究を行い、日本の木彫表現との比較を行うため、5年間の研究期間の内、4回の現地調査を予定した。平成28年度においては、その第4回目の現地調査として、イタリアにおいて欧州の木彫作品について調査を行った。当初の予定ではアメリカ合衆国での調査であったが、平成27年度当時、調査を予定していた都市で国際博覧会などと予定が重なり、非常に混雑が予想されることもあり、平成27年度と平成28年度の予定を入れ替えて調査を行った。なお、予定の入れ替えにより研究の進行に支障をきたすことはない。さらに変更前にイタリア中部と南部そしてフランス等において欧州の木彫作品について調査を行う予定であったが、イタリアでの調査候補地の増加などの理由でイタリアに絞って調査を行うことが最良であると判断し、調査を行うこととした。 ミラノではブレラ絵画館、1900年代美術館、ヴェネツィアではカ・ペーザロ現代美術館、フィレンツェではドゥオーモ付属美術館、サン・スピリト教会、マリノ・マリーニ美術館(フィレンツェ)、ウッフィツィ美術館、ピストイアではマリノ・マリーニ美術館(ピストイア)、ローマではヴァティカン博物館、国立近代美術館において調査を行った。 特にドゥオーモ付属美術館ではドナテロによる聖マグダラのマリア像を実見することにより、像の破損箇所や彩色層の剥落箇所からその彩色層の厚みやわずかではあるが木地の様子を確認することができた。フィレンツェのマリノ・マリーニ美術館では意図的に特徴のあるノミ痕を使い分けている、マリノ・マリーニの木彫作品《水泳選手》を実見することができた。また調査と併行して、研究内容のひとつである木彫に関する造形的試みについて、研究代表者と研究分担者それぞれが実際に木彫制作を通して検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5年間の研究期間の内、今回で予定していた4回の海外での現地調査を無事終えることができた。平成27年度と平成28年度の現地調査場所の入れ替えをしたが、当初の計画に支障をきたさずに、かつ研究資料を収集することができている。木彫制作を通した検討も進めることができている為、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
欧州における木彫について、これまで収集した作品及び作品に関する資料を整理し、またさらに研究代表者の大原央聡は主に欧州の木彫表現全般について、さらに表現技法と彫刻素材である樹種とのかかわりについてまとめる。研究分担者の河西栄二は主に寄木、内刳りの有無などと表現の在り方がどのように影響しているかについてまとめを行う。双方の内容を受け、日本の木彫表現との比較を行う。調査と併行して行っていた、研究内容のひとつである木彫に関する造形的試みについて、研究代表者と研究分担者それぞれが実際に木彫制作を通した検証について、9月に展覧会の形でこれまでの制作研究の成果を発表する。
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Causes of Carryover |
当初の予定より渡航先の変更等もあり旅費が増えたが、研究期間前半に計画していた資料整理、分析などを、次年度に実施することとしたため、大きな額ではないが未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究最終年度での人件費と成果の発表のための展覧会経費としても使用を予定している。
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