2014 Fiscal Year Research-status Report
明治・大正に学ぶ彩色の技術-近代の顔料と下地の表現
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25370175
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Research Institution | Bunsei University of Art |
Principal Investigator |
宮北 千織 文星芸術大学, 美術学部, 教授 (90645201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 力 広島市立大学, 芸術学部, 准教授 (00401464)
上野 勝久 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (20176613) [Withdrawn]
荒井 経 東京藝術大学, その他の研究科, 准教授 (60361739)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 山車 / 建築彩色 / 日本画 / 彩色技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の中心的な研究対象である宇都宮二荒山神社の菊水祭山車・火焔太鼓の彩色復元を実施した。4月~6月には、前年度に実施した火焔太鼓の菊彫刻部分の現状見取り図ならびに自然科学分析の結果などを精査して、使用された色材を絞り込み、配色や技法を検討する研究者会議を開いて復元彩色案を策定。宇都宮市民有志による山車復活プロジェクト理事などの祭関係者や地元有識者に提示して決定した。また、山車彫刻師や建築彩色家から彩色技法に関する指導や助言を受けた。さらに、色材の接着に深く関わる良質の膠を得るために、牛皮から抽出した膠の制作も行い、実用に資している。 7月~9月には、本研究の拠点である文星芸術大学内において、研究代表者と研究分担者らの教員に学生や若手日本画家を研究協力者として加えた作業チームを編成して菊彫刻への復元彩色を集中的に実施した。膠による木地固めと礬水引き、金箔押し、胡粉下地、地塗彩色、上塗彩色の工程である。彩色には、自然科学調査の結果を参照した色材を用いたが、中でも山車が創建された幕末期から明治前半を特色付ける色材である花紺青(コバルトで発色させた色ガラスを粉砕した色材)を使用して青色の菊を復元したことが大きなトピックスとなった。完成した菊彫刻は、10月に修復を終えた山車の本体に取り付けられて10月26日の菊水祭での巡行を果たした。山車復活のニュースは、10月25日の毎日新聞栃木版、下野新聞、27日の下野新聞、読売新聞栃木版、東京新聞、11月9日の下野新聞にいずれも大きく取り上げられた。巡行を終えた山車の菊彫刻等は、宇都宮市の施設である清明館において一般に公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の2年目にあたる平成26年度までに、本研究が主要な対象としてきた宇都宮二荒山神社菊水祭山車・火焔太鼓における菊彫刻の彩色調査と復元を達成し、約100年ぶりとなる火焔太鼓の復活巡行を達成できた。当初は、3年目にかかると予想していた研究であったが、予算の前倒し等の変更によって早期に一定の目標に達することができた。 一方、周辺地域の山車や寺社建築の彩色調査については、最終年度への繰り越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度となる平成27年度には、本研究の成果である二荒山神社菊水祭山車・火焔太鼓における菊彫刻の彩色調査と復元の実績を整理するとともに、これまでに研究代表者が関わってきた栃木県内の寺院における天井絵制作の実績や研究分担者が関わってきた明治期の天井絵の保存修復等の情報を持ち寄って共有を図った上で、新たな対象の調査研究に取り組み、特に板材等への彩色技術について日本画家の立場から取りまとめていく計画である。前年度に実施した菊彫刻への復元彩色の経験から、本研究が対象とする彩色技術には表面にあらわれる上塗彩色よりも木地固め、礬水引き、胡粉下地といった下層の彩色技術が重要であることがわかっている。その点を踏まえ、板材等への彩色技術を専門とする技術者への聞き取り調査や現場見学の機会も設けていく計画である。
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Causes of Carryover |
平成26年度から平成27年度に計画していた二荒山神社菊水祭山車・火焔太鼓の彩色研究に関して、平成25年度の予備調査等が予想以上に早く進行したため、修復実践研究の費用を平成27年度から平成26年度に大幅に前倒しして備え、無事に予定された研究を実施することができた。しかし、予算上に余剰が残り、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、研究期間の最終年度となる。本研究が中核とする研究対象の二荒山神社菊水祭山車・火焔太鼓における菊彫刻の彩色調査と復元の実践は、前年度までに終了したが、その成果を記録して幅広い分野で共有できる資料とするための整理や報告書作成の人件費が必要であり、次年度使用額の一部をこれに充てる。また、これまでに研究代表者が関わってきた栃木県内の寺院における天井絵制作の実績や研究分担者が関わってきた明治期の天井絵の保存修復等の情報を持ち寄って共有するための資料作成にかかる費用にも充てていく計画である。
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Research Products
(6 results)