2013 Fiscal Year Research-status Report
古典絵画における岩絵具粒子分布の検討とその芸術表現への応用
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25370178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
橋本 信 (橋本 弘安) 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (30189485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 香 女子美術大学, 芸術学部, 准教授 (80282812)
坂田 勝亮 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (40205745)
稲木 吉一 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (40232508)
北澤 憲昭 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (60296217)
宮島 弘道 女子美術大学, 芸術学部, 准教授 (40710299)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 岩絵具 / 古典顔料 / 曼荼羅 / 天然顔料 / 色彩学 / 粉体 / 保存修復 |
Research Abstract |
現在、主に「日本画」といわれている絵画は、素材として「膠」「岩絵具」などに特色を持っているとされている。本研究で「岩絵具」の「粒度分布」に対する考察から、その検証としての近代以前の作品と推定される曼荼羅の「部分模写」と、それらの芸術表現への応用を試みている。 絵画作品<古典>から推定する岩絵具粒度分布の分析手法の確立については倍率・撮影条件など様々な検討の後、曼荼羅の小品をモデルとし分析を進めた。400倍の顕微鏡写真を撮影、A4版に出力し透明フィルムを重ね粒子の輪郭を手作業で抽出さらに抽出されたフィルムをA3に拡大の後、顕微鏡のスケールと篩網の目開きから5,10,20,30,40,50μmに相当する罫線の表を作りA3にある輪郭と短径がどの径となるかを照合し総計で2692個の粒子を計測し孔雀石2種と群青1種の分布図を作成し、一連の分析手法とした。 今回の再現模写にも用いる藍銅鉱と孔雀石試料の作成は、ボールミルなどで慎重に粉砕し1から200μmまでの20段階のメッシュを用い丁寧に分級した。 25年度は、それらの分析を研究者で共有し、再現部分模写を行うためのカメラなどによる基礎的情報の収集と準備を進め、その作品の美術史的考察については図書・文献資料などによる検討に入っている。今回対象の岩絵具についての色彩学的考察についても26年度に行う科学的な分析のための準備を行った。また、現在よりも少ない粗さの段階の絵具を使い行う創作表現の研究も26年度本格化させるにあたり、それに用いる粉体素材を使い手法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①25年度は、目的①絵画作品<古典>から推定する岩絵具粒度分布の分析手法の確立。②歴史的作品資料から検討する岩絵具の粒子段階の解明のために、作品の顕微鏡写真の撮影と分析。藍銅鉱と孔雀石を使い多段階のメッシュを用いた試料の作成を行う事と、26年度に①②をもとに行う、部分復元模写、資料の美術史的考察、色彩学的考察のための基礎的要件の整備を研究者個々に行うことであり、芸術表現・作品制作で、それに用いる粉体素材を使う手法の検討を検討することが25年度に行うことであったが、それぞれ、実績報告にあるように達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、江戸中期よりも古い推定される「曼荼羅」の群青と緑青の岩絵具について25年度の作成した試料と測定結果をあわせ、岩絵具の粒度分布を0.01gの単位で合成し、それを用い再現部分模写を行う。使われている他の岩絵具についても、これと似た手法がとれる場合、それに近づけることを検討する。また、岩絵具試料と作品の原本について蛍光X線分析、試料については、可能な分光分布測定を行い、その鉱物の同定を確かなものとする。それらの分析については、(公財)神奈川科学技術アカデミー等の機材をレンタルし表面を分析する。 また、歴史資料から検討された粒子段階での人造岩絵具の製造とそれによる創作も26年度からはじめる。人造岩絵具は、女子美術大学で開発製造されている素材を用い粒子の混合を行い担体に着色する方法で製造した岩絵具を用い研究分担者・協力者が試作を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じている理由は、備品として予定していたカメラが当初見積もりより廉価となったこと、顕微鏡写真の粒子の分析、岩絵具試料の製造に分析補助、製造協力者を予定していたが絵画の画面上の絵具粒子を顕微鏡写真から測定していく方法、およそ10μmの間隔のフルイを用い試料を作成することは、間隔が広ければ容易であるが、今回の試料作製は熟練を要する作業であるとなど試行錯誤の部分がおおく、補助員、協力者を使わず作成、及びデータを作成した。また、美術史的考察については、既存の資料などの整理で予算の執行にいたっていない。 これら部分について今後研究の進展で図書などの購入、調査などが必要になるがそれらと、芸術表現研究の柱の一つである作品制作に使用していく。
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