2014 Fiscal Year Research-status Report
オーケストラ経営の課題と展望-東アジア地域における比較研究を通じて
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25370192
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
近藤 宏一 立命館大学, 経営学部, 教授 (50298717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長内 優美子 立命館大学, 公私立大学の部局等, その他 (80645036) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本のオーケストラ / 韓国の地方オーケストラ / オーケストラのファン / ピアノ協奏曲「黄河」 / 関係性マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に日本のオーケストラの経営について、第二次世界大戦後の変遷を外部との関係性の変化という視点から検討し、比較研究の基軸を設定するための研究を行った。そこでは、オーケストラの外部との関係性を①さしあたり音楽そのものを媒介とした関係、②音楽の「効用」における関係、③音楽ビジネスとしての関係に分類し、その視点から戦後日本のオーケストラを3つの時期区分(第1期:コンテンツ・ユーザーのためのオーケストラ、第2期:自立的音楽組織へ-聴衆や行政との新たな関係性形成の模索、第3期:関係性の多様化・複線化)に整理した。そのうえで、今後のオーケストラ経営についての検討課題として、①地域との関係、②「ファン」の形成、③学校鑑賞の功罪、をあげた。 以上の研究成果は平成26年12月7日に行われた日本音楽芸術マネジメント学会第7回冬の研究大会において「オーケストラにおける関係性マネジメント-戦後日本のオーケストラの展開を振り返って-」として報告し、また同学会の学会誌に現在投稿中である(査読結果待ち)。 また、韓国のオーケストラの経営については、前年度に引きつづき資料検索と事実関係の整理に努めた。このなかでは、韓国の地方オーケストラにおいては音楽家の自主的な組織として設立されつつ、地方自治体との関係を深めていくケースがいくつか見られることがわかったが、その経緯についてはなお研究が必要である。 中国・台湾・香港については、特に遅れていた中国大陸のオーケストラの歴史についての研究に着手し、定評のある周光蓁著『中央樂團史』(大陸版は『鳳凰詠─中央樂團40年』)などを用いた検討を始めている。現時点では特にピアノ協奏曲「黄河」の作曲過程の検討を通じて、「文革」期前後のオーケストラ音楽に対する文化政策的対応の変化を調査した論文を学術誌に投稿中である(査読修正中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度においては、調査研究については進展があったものの、その成果の発表が遅れている。これらについては現在2本の論文を投稿中(査読結果待ち/査読修正作業中)であるほか、近日中にさらに1本を投稿し、同年度の研究成果について明らかにする予定である。成果の発表が遅れた大きな理由は、平成26年度後半期における研究代表者(近藤)の学内業務が予想以上に多忙であったためであるが、これについては平成27年度には解消しているので、今後は遅れを取り返し研究の前進を図る条件が整っている。また、同様の理由により平成26年度は予定していた海外調査が実施できなかった。これについても平成27年度早期に実施し、研究成果に反映させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、日本のオーケストラ経営について、具体的なケースについてインタビューも含めて資料を収集し、特に地方オーケストラの「ファン」形成について検討する。 第二に、韓国または台湾および香港または中国での海外調査を行い、インタビューによって具体的なケースについての情報を収集する。特に韓国の地方オーケストラ、香港の二つのオーケストラの異同、中国の新興オーケストラについて重点的に調査する。以上二つについては、年度前半期をめどに実施する。 これらを通じて収集した情報を、これまでの研究成果とあわせて年度後半期に集中的に検討し、研究報告書にまとめる。また、その成果をシンポジウムの開催または書籍出版のいずれかによって社会的に還元することをめざす。
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Causes of Carryover |
当該年度後半期に、研究代表者(近藤)の学内業務が予想を上回ったことと、研究分担者(長内)が、移籍先大学において科研費実務の提供を受けられないために分担者を外さざるを得なくなったことから、予定していた海外調査2回が実施できなかった。また、韓国文献・論文資料の翻訳についても、翻訳者の都合により一部の支払いが次年度に回った。これらが次年度使用額が生じた主な原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画でも示したように、次年度においては研究代表者(近藤)の研究条件も整い、また長内も研究分担者として復帰する予定である。このため、当該年度に予定していた海外調査を次年度前半期に実施する。また、韓国語文献・論文資料の翻訳については、すでに作業済みのものについて支払いを行う。
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Research Products
(1 results)