2013 Fiscal Year Research-status Report
分析書誌学と出版史的方法による近代日本における書物の制度化の解明
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25370217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 広光 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (70226546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 敦 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (00611097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本文学 / 分析書誌学 / 出版史 / 活字印刷 |
Research Abstract |
(1)明治前半における活版印刷物の書誌記述を行うためのサンプリング調査を行い、記述項目を書物の形態、版面様式、刊記記載事項、出版社情報(広告)の観点から、25項目を定めた。この項目を目安に、国立国会図書館近代デジタル・ライブラリーの活版印刷物うち、翻刻小説100点、政治小説94点、新体詩・近代詩60点、戯曲101点の書誌記述を行った。 (2)研究分担者(磯部)は、書誌記述項目をもとに奈良女子大学附属図書館蔵奈良女子高等師範学校旧蔵大礼記念文庫の調査を行った。その結果、大礼記念文庫を形成するの書物群の性格と女高師という空間における機能などを明らかにし、「大礼記念文庫と書籍文化環境-大正大礼と奈良女子高等師範学校-」(『書物・出版と社会変容』16号)という論文を発表した。 (3)研究代表者と分担者は、明治期の貴重な活版印刷物を数多く所蔵する古書店で許可を得て書籍調査を行った。明治期の活版印刷物も江戸期の板本同様、同一書名の書物でも出版地、出版年、印刷出版の会社の違いなどによって少しずつ書物を構成する要素が異なることが判明した。特にそのヴァリエーションが甚だしい『滑稽演説』などの演説物、講談などの活字翻刻物などを中心に、今後より詳細な調査を行うため、同古書店から資料として一括購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記述項目選定や明治前半活版印刷物の性格を明らかし、かつ明治活版本の分析書誌学の方法を確立するための同名書籍の一括購入は、研究目的に記した通り、あるいはそれ以上の達成度であると自己評価する。ただし、国立国会図書館近代デジタル・ライブラリーのデジタル画像を資料とした書誌記述については、記述項目数を欲張ったために、計画よりもやや少ない点数の370点程度にとどまった。4年計画の進度からいうとわずかに遅れているので、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)近代デジタルライブラリーのデジタル画像をもとにした書誌記述については、有意味とはいいがたいいくつかの項目を削除し、書誌データの量を増やす方向に軌道修正して実施する。 (2)古書店から購入した同一書名の出版物について、造本、表紙絵・挿絵、活字、組版などの違いを詳細に記述し、明治前半の活版印刷物の性格を明らかにする。また性格と出版流通のあり方、享受のあり方との関係について考察する。
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