2013 Fiscal Year Research-status Report
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25370222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
種田 和加子 藤女子大学, 文学部, 教授 (90171868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 淑子 東海大学, 国際文化学部, 教授 (40183008)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 博覧会 / ジャポニスム / 紋様 / 近代史 / 金工史 / 美術史 |
Research Abstract |
泉鏡花の父、泉清次が、彫金師であったことに注目し、彼が残した数少ない作品と、博覧会への出品状況を精査することで、鏡花の想像力への関わりを解明することが課題であった。まずは、明治18年にニュルンベルクで開催された金工万博博覧会に、清次が何を出品したのかを特定することと、その金工博覧会がいかなるものであったかを明確にする必要があった。この博覧会についての資料が不足しているなかで、美術史研究家のシビル・ギルモント氏が2002年から2003年にかけて発表した、3本の論文が見つかり、その翻訳を専門家に依頼したことでこの博覧会のほぼ全容が把握できた。あわせてバイエルン州立図書館および、ゲルマニッシュナショナルミュウジアム付属図書館とのやりとりによって、当時ミュンヘンで出版された、「日本の展示に関する特別目録」を入手した。それによって、泉清次は、「香炉、四分一、を素材として浮き彫りを施した彫金作品」を出品してることが判明した。当時事務官だった山本五郎の「金工万国博覧会報告」にも清次が「金属器一点」を出したことは申請時点で確認していたが、作品が香炉であることが特定できたことはかなりの進歩である。 なお、この「特別目録」には、金沢銅器会社、村沢国則、水野源六らの出品作品も詳しく記述されており、彼らは山本五郎の報告や一般的な目録には記述されていない製品を作っていることがわかり、この記載のずれについては、仔細に検討すべき問題として残る。これに関連してミュンヘン、ニュルンベルクに行き、資料を入手してきた。 さらに、この博覧会への出品者や会社は、明治6年のウイーン万博に関与しており、とくに清次は、「和泉政久」として「海士ノ玉取之図」を象嵌した鉢を出品していることを、ウイーン万博の出品目録とつきあわせて確認した。文献上での発見ではあるが、泉清次が政光以外の工名をもつことは注目したいし、今後も追究したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まったく解明されてこなかったニュルンベルク金工万国博覧会に泉清次が、同僚とともに何を出品していたかがわかったことや、この博覧会の規模や目的を、先行研究によって把握することができたことは特筆すべき点である。なお、この博覧会に、金沢銅器会社や村沢国則、水野源六らが同様に出品していることから明治6年のウイーン万博への彼らの関与も明確にしたいと思っていたが、それにも着手できた。日本がはじめて国家的な規模で万博に出品するにあたって、金沢の金工家たちが何を注文され、どういうものを出品したかが文献上は特定できた。ウイーン万博については、申請時にも遡及してたどるべき問題であるとは記していたが、金沢における豊富な資料、先行研究によって、彼らの働きが明確になってきたことは収穫である。泉清次と鏡花とは、「紋様」、つまり、彫金であればその絵付けと、鏡花の「紋様」への関心において重要な接点があるということが明らかになった。2014年2月21日からミュンヘン、ニュルンベルク、ウイーンなどに行き、資料収集と、応用美術をもつ美術館での見聞を深めたことにより、今後の展望が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイーン市立博物館において、本年、ウイーン万博140周年記念の展示が行われる予定である。それにあわせて、当地を訪れ、ジャポニスムと応用美術との関係をより深く調査、考察する。なお、清次が出品したと思える鉢がどこにあるかは特定できないが、米沢弘正(金沢出身)の作品がウイーン応用美術館にあることはわかっているので、それを見ることも目的である。清次の作品の一つである「鶴亀図大盃」が清水三年坂美術館にあり、それをさらなる考察の対象とする。清次が制作した「亀」の顔が「龍」に酷似しており、金沢に伝わる「加賀紋」の系譜の資料にも異例の「亀」の紋様があることから、郷土史家の助言をあおぎつつ、この盃が制作された年代や、その意味を解明したい。あわせて、鏡花作品「歌行燈」、「夜叉ケ池」「海人別荘」など明治後半から大正期半ばにかけての作品と明治初期の図案としての「海士ノ玉取之図」や海底幻想、竜神などとのつながりを考察したい。したがって、今年、シカゴ、フュラデルフュアに調査に行く予定であったがた、来年度に伸ばし、「紋様」の政治性(博覧会の図案の意図)と鏡花文学との関係を考察することに専念したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ニュルンベルク金工万国博覧会、および、その前提としてのウイーン万国博覧会の調査、研究、また、京都三年坂美術館にある泉清次作品閲覧、国立博物館所蔵のウイーン万博出品作品の閲覧、金沢における近世資料閲覧など、海外研修を含む渡航費の支出を必要とする。ドイツ語文献の翻訳料、研究に関する資料、コンピューター、書籍の購入のため支出を要する。 旅費35万、翻訳料金など謝礼20万、パーソナルコンピューター13万、書籍など5万
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Research Products
(3 results)