2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370297
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
相田 洋明 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (70196997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅垣 昌子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (60298635)
金澤 哲 京都府立大学, 文学部, 教授 (70233848)
松原 陽子 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70515642)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォークナー / 老い / 表象 / レイト・スタイル / アメリカ南部 / アメリカ文学 |
Research Abstract |
本研究は、従来ほとんど研究されてこなかった、フォークナー作品における「老い」の表象を探求しようとするものである。本年度の中心的な活動として、研究代表者・研究分担者にさらに5人のフォークナー研究者を加えた「フォークナーと老いの表象」研究会を4回開催し、当該テーマについての研究発表と議論を行った。 相田は、フォークナーの曽祖父ウィリアム・C・フォークナーの生涯と作品について研究し、曽祖父をモデルとするサートリス大佐の人物像にウィリアム・C・フォークナーの作家としての側面が全く現れないことのなかに、フォークナーによる旧南部/「老いた」世代の声の隠蔽/諫止を見出した。また、フォークナーの妻エステルが書いた作品がフォークナーに与えた影響に関する論文を発表し、より広い視野からフォークナー文学の成立過程について考察した。 梅垣は、「デルタの秋」と「あの夕陽」における「老い」の表象について研究を行った。「デルタの秋」と「あの夕陽」に描かれる時代の変化を自然と人間の関係の変化、すなわち、デルタの縮小とブルースの拡大という観点から詳述し、アンクル・アイクとサム・ファーザーズの老人像を分析した。 金澤は、フォークナー作品に見る「老人」たちを概観し、セクシュアリティ、家父長制、「若年寄」、レイト・スタイルなどの分析視点を提示した。またクエンティン・コンプソンの「老い」をモダニズムにおける「時間の主題」との関連において分析した。さらに『寓話』を歴史的な展望のもとに考察し、アメリカで講演を行うなど多面的に研究を進めた。 松原は、「南部における「成長」と「老い」」をテーマに発表を行い、『墓地への侵入者』におけるルーカス・ビーチャムを南部特有の厳格な社会制度を生き抜いた「サバイバー」としてとらえる視点から分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「フォークナーと老いの表象」研究会を4回開催し、当該テーマに関してフォークナーの全キャリアにおける作品を対象に、多様な側面からの研究発表と議論を行うことができた。具体的には、初期作品に関しては、「William C. Falkner (1825-1889)の生涯と作品」、「クエンティン・コンプソンと「老い」のモダニズム」、中期作品に関しては、「「デルタの秋」と「あの夕陽」における「老い」の表象」、「フォークナーにおける「老い」の逆説:『野生の棕櫚』に見る老いの概念とジェンダー表象」、「ローザ×ローザ」、後期作品に関しては「南部における「成長」と「老い」――『墓地への侵入者』におけるルーカス・ビーチャムを中心に」、「1950年代言説におけるフォークナーの老人表象と「冷戦のコンテクスト」」、「フォークナーにとっての後期作品の意味:Go Down MosesのIkeを手がかりに」、「The Mansionにおける老いの諸相」をテーマに研究発表が行われ活発な討議がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
「フォークナーと老いの表象」研究会を年3回開催し、研究発表・議論を行う。また、これまでの研究会での研究成果を論集の形にまとめ、平成26年10月に科研費の研究成果公開促進費の公募に応募する。さらに、老いの表象の研究において伝記的研究は不可欠であることから、Joel WilliamsonのWilliam Faulkner and Southern History (1993) の翻訳に取り組む。論集、翻訳ともに平成27年の出版を予定している。また、一次資料の検討のため、研究代表者・研究分担者の全員が海外の研究機関での資料調査を行う。 相田は、ウィリアム・C・フォークナーの作品の詳細な分析と評価に取り組む。また2015年7月にミシシッピ大学に行われるFaulkner & Yoknapatawpha Conference 2014に参加する。さらにヴァージニア大学のAlderman Libraryで資料調査を行う。 梅垣は、『行け、モーゼ』はじめ、フォークナーの“Indian Stories”を中心として、テキストおよび参考文献の講読を行う。Faulkner & Yoknapatawpha Conference 2014に参加し、あわせてミシシッピ大学にてフォークナー・コレクションの資料調査を行う。またCenter for Faulkner Studiesにても文献調査を行う。 金澤は、『寓話』における老いをポストモダニズムの観点から研究する。またFaulkner & Yoknapatawpha Conference 2014で研究発表を行う。さらに、日本ウィリアム・フォークナー協会年次大会においてシンポジウム(テーマは「フォークナーと戦争」)の司会を務める。 松原は、『墓地への侵入者』に関連する(特に冷戦期の南部文化社会に関する)文献講読を行う。Faulkner & Yoknapatawpha Conference 2014に参加し、あわせてミシシッピ大学にてフォークナー・コレクションの資料調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は必ずしも当該テーマに関係する研究書の出版が盛んではなく、むしろ次年度の海外調査にあてる方が有効に使用できると判断したため。 2014年7月にアメリカMississippi大学で行われるFaulkner and Yoknapatawpha Conference 2014への参加や、アメリカVirginia大学Alderman Library、アメリカSoutheast Missouri州立大学Center for Faulkner Studiesでの資料調査のための旅費、および、当該テーマに関わる研究書・資料の購入に使用する計画である。
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