2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
相原 直美 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (50337705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テネシー・ウィリアムズ / リリアン・ヘルマン / アメリカ演劇 / 戦争表象 |
Research Abstract |
本研究の目的は、20世紀以降のアメリカ演劇および舞台芸術における戦争表象の実践を調査し、その社会的影響力と倫理的有効性についての考察を行うものである。 演劇は、映像や写真とは異なり、遠い地で起きている戦争の状況を瞬時に伝えることは出来ない。演劇は舞台という限られた空間に於いて、現実から大いに遅れをとってしか、戦争を描き得ない。しかし、映像や写真はその直接性、即時性、そして衝撃性を通して戦況の激しさや苦しみを人々に伝え得る一方で、まさにその「効果」故に好奇の視点を誘発し、沈思する暇を与えずに消費されていってしまう面を持つ。では、演劇はどうか。演劇は、まさにそのような「効果」から遠い地点にいるからこそ、まさに現実から「遅れて」戦争を表象するからこそ、映像や写真ではなし得ない「倫理的思考」へと人々を導き得るのではないか。本研究はこの点を明らかにすることを目指している。 本年度は、研究対象となっている作家が生きた20世紀前半における戦争報道についての研究及び調査に着手した。テネシー・ウィリアムズやアーサー・ミラーというアメリカ演劇を代表する劇作家2名を生み出したこの時代は、まさに写真や映像を通じての戦争報道が現代の形へと成立していく時代でもあった。彼らを取り巻く戦争写真や映像は、自ずと彼らのドラマツルギーに影響を及ぼしたものと考えられる。特に第二次世界大戦中の報道写真とその影響力について研究、調査を進めつつ、ブロードウェイにデビューしたばかりのウィリアムズが掲げたドラマツルギーを検証した際、彼が掲げるplastic theatreというドラマツルギー構築の背景にあるのは、写真や映像への嫌悪であるのではないか、ということに確信が持てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度については、当初、(1)第二次世界大戦参戦前夜から戦争中のアメリカ演劇に焦点を当てて、特にリリアン・ヘルマンの作品を取り上げて考察・検討(2)20世紀初頭の戦争報道についての資料収集と研究、という2つの計画を立てていた。しかし、(2)の写真・映像報道の研究・調査に時間を割いてしまったため、(1)のヘルマンについてはあまり検討することが出来なかった。また、入手不可能な資料については大学休業時を利用して渡米して資料収集をする予定であったが、渡米先について更なる検討が必要であったため、そして、スケジュール的にも困難であったため、実行することが出来なかった。 しかし、戦争報道の研究に集中的に従事した結果、ウィリアムズのドラマツルギーと当時の戦争報道との関連について自分なりに考察し、それなりの成果を得る事が出来たという意味に於いてはよかったと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、20世紀初頭の戦争報道(主に写真・映像)の研究、調査を進めつつ、更にリリアン・ヘルマンとテネシー・ウィリアムズの作品に於ける戦争表象について、より検討していく予定である。また、本研究の最終的な目的である演劇が提供し得る「倫理性」についての研究を同時進行的に進めていきたいと考えている。現時点で考えているのは、特にレヴィナスの思想にヒントがあるのではないかと考え、レヴィナスの思想、特にウィリアムズの作品との親和性という観点から研究をしていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、資料収集のために渡米することを計画していたが、渡米先を再検討する必要があり、また休暇を利用することとしていたが、スケジュール的に困難であったため、実行することができなかった。 次年度は出張先を速やかに決定し、研究を遂行する上で必要な資料収集をする予定である。
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Research Products
(1 results)