2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370302
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
相原 直美 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (50337705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テネシー・ウィリアムズ / リリアン・ヘルマン / アメリカ演劇 / 戦争表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、20世紀以降のアメリカ演劇および舞台芸術における戦争表象の実践を調査し、その社会的影響力と倫理的有効性についての考察を行うものである。 平成26年度は、前年度に引き続き、アメリカ演劇、特にテネシー・ウィリアムズの戯曲に於ける戦争表象について考察してきたが、特に「表象」と「倫理」の関係に光をあててきた。前年は「写真・映像」と「演劇」を互いに対立するものとして捉え考えてきたが、果たしてそのような考察方法がよいのだろうか、という疑問に突き当たることとなった。人間は何かを視覚的に捉えることはできても、その行為が倫理的な「共苦」の感情へと到達するまでにはどのような回路を経なくてはならないのだろうか。「写真」「映像」「演劇」とでは、その回路に何らかの違いがあるのだろうか。演劇は、写真や映像のようなタイムリーな即時性はなく、結局は大きなカタストロフが発生してからかなり時間的に遅れて、形になるものである。そのような演劇にとっての宿命的な「遅さ」をもってして、どのような手法をもってすれば「戦争」というものを描き、そしてそれを通じて倫理的呼びかけが可能になるのだろうか。このような問いを抱きつつ、特に今回は改めてウィリアムズのドラマツルギーplastic theatreを映像文化のみならず表現主義の影響をも視野にいれて考察し、その差異から浮び出てくるものを掬い出すことを試みた。同時にジュディス・バトラー、エマニュエル・レヴィナスの思想を補助線として、ウィリアムズ劇の「倫理」の呼びかけについての考察も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成26年度は、思ったように研究が進まなかった。一つには「表象」の問題と、実際の戯曲のストーリーとの関係をどのように処理して語れば良いのか、という点に混乱が生じてしまったからである。また、テネシー・ウィリアムズにポイントを絞ってしまったため、ヘルマンの作品考察は不十分なまま終ってしまった。更に、スケジュール上の理由により、平成25年度に引き続き、渡米しての資料収集が出来なかった。ただし、資料の大半はAmazon等でかなり手に入れる事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度であり、いままでの考察の総括をしなくてはならないと考えている。想像以上に、研究は難航したが、それでも、一貫して考えて来た「戦争表象」と「倫理的呼びかけ」については、私なりに(結論とまでは言えないが)まとまった考察が出来てきているという手応えはあるので、それを形にしたいと考えている。まだ出来ていないSusan Sontagについても今後は視野に入れて、私の掲げた「他者の苦しみを経験することの(不)可能性」というテーマに、私なりの応答をしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、平成25年度できなかった資料収集のための渡米を平成26年度にしようと計画していたが、スケジュール的に困難であったため、実行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は渡米等も含め、出張先を速やかに決定し、研究遂行に必要な資料を出来るだけ早期に収集する予定である。
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