2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大宮 勘一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (40233267)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、プロジェクト二年目として、第一に、一年目に引き続き18世紀後半のドイツ文学の個別作品に関して情動性の発揮の表現容態を具体的に検討する作業を行った。扱った作品はレッシング『エミーリア・ガロッティ』、ゲーテ『若きヴェルターの悩み』、同『タウリスのイフィゲーニエ』である。これらの検討から、ドイツ文学における「白兵戦Nahkampf」的なものを、その重大な要素として剔出し、身体を接近させた対決の場面における個人を超えた情動の発現を詳細に検討した。このことの成果として、論文「白兵戦の倫理」を『研究年報』誌(慶應義塾大学文学部独文専攻編)に発表した。第二に、同じ「白兵戦」的なものの喪失過程を19世紀のドイツ文学に、またその新たな形での復活を20世紀のドイツ文学に探る作業を続行中である。具体的には、H・フォン・クライスト、F・ヘッベル、A・シュティフターら19世紀の作家と、E・ユンガー、R・ムージルら20世紀の作家を扱う予定である。第三に、情動と正義の関係を考察する作業を行い、日本独文学会2014年秋季研究発表会(10月、於京都府立大学)でのシンポジウム「もっと正義を!」にパネリストとして参加、「配分か交換か」と題した発表を行い議論に参加した。本発表は学会誌『ドイツ文学』に論文として投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に1800年前後の情動の発現形態について論文、研究発表などで成果を公表することができ、また、1900年前後におけるその変容に関しても検討し論じるに十分な資料と構想を得たと考えるため。 但し、予定されていた海外研究者のワークショップ招聘は、ご本人の家庭の都合で不可能となった。別の形での意見交換の機会を27年度に設けたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究最終年度として、上記の海外研究者(ハーゲン大学教授ウーヴェ・シュタイナー氏)を訪れ、講演会、ワークショップなど公開の場において現在までの研究成果を報告し意見交換を行う予定である。シュタイナー教授は、18世紀後半の「感情」の前景化や、19世紀後半から20世紀にかけての「情動」の変容とメディア技術の関係についての研究実績があり、本研究プロジェクトの議論を深めるために相応しい協力者である。 さらに、3年間の研究のまとめとして、「情動の人間学」をテーマとしたドイツ語による論文集の刊行を計画している。
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Causes of Carryover |
海外研究者の招聘が、本人の家庭の事情によって中止となり、その渡航費用とワークショップ開催用の費用が消化できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、研究代表者の大宮が渡独し、ハーゲン大学およびマンハイム大学において講演、ワークショップを共催し、当初予定していた海外研究者との議論・意見交換を行う予定である。
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Research Products
(2 results)