2014 Fiscal Year Research-status Report
清末民国初期華英言語接触所産の華語の特徴についての実証的研究
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25370500
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
矢放 昭文 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20140973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 光世 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (50411012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 英粤対音 / 英語音標記 / 非鼻音化現象 / 英語知識普及 / 粤語字標音の変遷 / 徐志摩 / 翻訳作品 / 歐化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績として発表2回、論文3篇を挙げる。第1の発表は2014年6月28日開催の日本中国語学会・関西支部例会の席上、代表者・分担者共同により「清末民国初期の英語知識と歐化語法」と題して行った。清末~民国初期間に華人が刊行した文献より、華英両言語の接触がもたらしたと考えられる華語の特徴を整理し、その漢語史上の価値の一端について報告した。特に阿片戦争以降、商業上の需要に応じて刊行された『華英通語』(1855年)、『英語集全』(1862年)等「英粤対音資料」の英語音を標記する粤語字音が反映する非(脱)鼻音化現象と英語知識普及に伴う標記変遷経緯の詳細について述べるとともに、五四文学運動時期の華語資料として徐志摩(1897-1931)の翻訳文を取り上げ、そこに現れた「歐化語法」について分析を進め、その特徴の一端について研究報告を行った。前者については代表者、後者については分担者が担当した。第2の発表は代表者によるもので、11月25日、天理大学で開催された中国文化研究会2014年度第4回公開研究会席上で行った。「粤語広幡小説の「lat1」と「啖」」と題する発表である。 研究論文のうち、第1篇は代表者著「福澤諭吉と『増訂華英通語』」『京都産業大学日本文化研究所紀要・第20号』京都産業大学日本文化研究所編、2015年3月発行、pp.231(64)-209(86)、第2篇は代表者著「粤語広幡小説の「lat1」」『中國文化研究』第31号、天理大学中国文化研究会編,2015年3月31日発行、第3篇は関光世著「徐志摩の翻訳作品にみられる歐化現象について」『京都産業大学論集・人文科学系列』第48号、2015年3月20日発行、pp.157-175.である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代表者第1篇の論文は研究遂行上派生した周縁テーマをについて論述しており、必ずしも研究本来の目的を的確に捕捉した内容とはなっていない。この点で代表者の研究は若干回り道をしており、当初目的とした研究全体の進捗状況から判断するに、研究自体に遅れをもたらしていることは否めない。 第2篇の論文は、その結果より言える事柄が、清末民国初期のみならず粤語形成史を古く溯り得る研究に発展することを示唆しており、次段階研究の端緒ともなり得る。 分担者の発表および公刊済論文の内容は本研究目的を直接捉えて報告・執筆したものであり、本研究目的に叶っている。分担者の研究進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はまとめの段階に入っている。語音、語法の両面より清末民国初期の華語が英語との言語接触により受容した語学特徴について、これまで収集してきた該当資料の分析を進めているが、作業完遂には想定以上の時間を必要とすることも判明している。 一方で確実な研究成果として見込める語音面での特徴は、「英粤対音資料」を時系列で並べた場合に確認できる標記変容について考察結果である。つまり、『華英通語』狩野本(1855)と哈佛本(1860)間で確認できる非鼻音化現象を反映する標記改変についての考察結果と、『英語集全』(1862)の粤語音字による英語アクセント標記に注記された「声調変読」についての分析結果は、福次的に中山方言声調の歴史上の調値推定を可能ならしめると同時に、英語・非漢語を問わず外来語音源として粤語音系に受容する際には、音節末尾子音を活用するだけでなく、特に次濁音声母音節を陰(高)平調音節に受け入れてきた事実を歴史的に実証できる可能性が高い。さらに英語文法知識の受容が華語文体にもたらした改変の様相についても実証的研究成果として報告し、双方の結果をまとめて研究成果報告書に掲載したい。 「歐化語法」研究では徐志摩の翻訳作品に見える「被動文」「時・条件を表わす接続詞用法」などについての分析を一層深めると同時に、傅斯年など徐志摩と同時代に活躍した英学蓄積をもつ知識人の文体も考察の対象に入れる。 また清末~民国初期の間に刊行された英華字書、例えば1908年商務印書館刊行本などを資料として加え、英語を学んでいた当時の中国人知識層に紹介された英文法知識とその翻訳方式に整理・分析を施し「歐化語法」研究の一端とする。この結果についても研究成果報告書に掲載する。
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Research Products
(5 results)