2014 Fiscal Year Research-status Report
戦前期地方教育関係資料を活用した近代国語観の見直しと文献方言学の試行
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25370507
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 教授 (30160584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鑓水 兼貴 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (20415615)
竹田 晃子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (60423993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国語政策 / 方言 / 地方教育会 / 戦前期 / 国語観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1.戦前期地方教育会資料に反映した国語観の変遷に関する諸言説の収集整理と、2.戦前期地方教育会資料として収集された膨大な方言関係資料群の文献方言学的活用方法の試行を、全国資料を視野に置きつつパイロット・スタディーとして岩手県関係資料に焦点を当てる形で並行して進めた。 1.については、全国各県で発行されていた地方教育会雑誌に着目して、各地図書館に依頼、もしくは臨地調査により複製した資料にもとづき、PDF形式でのデータベース化を進めた。また、全国的データに加えて、岩手県教育会が関係する資料について、明治30年代から昭和10年代までの国語観の変遷を示す資料について、教育界雑誌「岩手学事彙報」の詳細な分析と「学事彙報」以外の郷土教育資料群を集積した国語観に関するデータ・エビデンス類の集積作業を進めた。なお、昭和期の郷土教育資料のうち断片的な昭和11年資料群については、その散逸部分65地点分を本プロジェクトによる調査で発見することができたため、岩手県立図書館所蔵の既存資料群と合わせて、その全容を明らかにすることができた。今後の利活用を促進するために、本プロジェクトによる整理ののちに岩手県立図書館に新発見分を寄贈する予定である。 2.については、岩手県郷土教育資料をパイロット・ケースとして設定し、新たに発掘された65点を含めた郷土教育11年資料については、今後の十全な資料保全と研究者間での共有化を期して、高精度写真撮影による電子資料化を行い、PDFファイルによるデータベース化を行った。併せて、これらの資料群に記載された個々の方言記述について、全県的なデータベースをほぼ完成し、郷土教育昭和15資料も加えて、「郷土教育資料」による岩手県昭和初期方言集大成の作成を目指している。その一部の試行として、現・釜石市内6地点の11年報告内容を統合して昭和初期・釜石方言集の再現を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトを開始した25年度当初から、予想していなかった新資料(岩手県郷土教育11年資料散逸分)の発見により、国語観の変遷に関する全国的状況の見渡しにやや遅滞が生じたものの、岩手県に関するケース・スタディーとしての飛躍的な分析進化を図ることができた。このような資料がまとまって残されている地域は全国的にまれであり、結果的に調査項目の共有化は果たされていないものの、共通の調査要綱により実施されて点は画期的である。文部省の標準語普及政策の一方で現場の教師たちがどのような草の根的な国語観を抱いていたかが示されているという点において、また、明治期の国語調査委員会と戦後の国立国語研究所による二つの方言調査の間を埋める大規模方言調査としての高い資料性を有していることについても高く評価される。25年の資料の整理・保存作業を踏まえて、26年度は高精度写真撮影による電子資料化を行い、PDFファイルによるデータベース化を行い、研究者及び市民の今後の利活用を促進するために本プロジェクトによる整理の後に岩手県立図書館に新発見分を寄贈に関する交渉を行った。上記のように、全国的状況の見渡しにやや遅滞が生じたものの、岩手県資料でのパイロット・スタディーにおいて分析進化を深めることができたため、全体として上記の達成度を十分に確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策としては、以下のとおりである。1.戦前期地方教育会資料に反映した国語観の変遷に関する諸言説のデータベース化がほぼ完了したことを踏まえて、明治期の国家語政策として実施された「標準語」以外の方言を排除する国語観から、方言をも国語として許容する共通語という緩やかな戦後の国語観に移行する過程において存在した、標準語も方言も否定しない昭和初期の草の根的な国語観について、日本人の言語生活史の中に確立する内容の報告書を作成する。併せて、明治期と戦後期の国家的事業として行われた二つの全国的方言調査の間を埋める資料として、各地に存在する郷土教育資料群をはじめとする地方教育機関系の方言資料の存在を指摘し、そのパイロット・スタディーとして岩手県郷土教育資料データベースを活用した昭和初期岩手県方言に関する分析報告を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、平成25年度に引き続き、26年度も岩手県郷土教育11年資料(散逸分)の発見に関する保存・分析・データベース化の作業が大きな比重を占めたために、代表者の所在地である岩手県盛岡市での作業に注力することとなり、全国資料の収集活動をやや抑制されたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度においては、報告活動などに際して大きな旅費が発生する見込みであり、代表者、分担者、協力者で執行に立っていく。
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Research Products
(1 results)