2013 Fiscal Year Research-status Report
外国人児童生徒の学習支援ための「対話型日本語能測定方法」の検証を目指して
Project/Area Number |
25370579
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小林 幸江 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 教授 (40114798)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 祐郎 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 教授 (50242227)
菅長 理恵 東京外国語大学, 留学生日本語教育センター, 准教授 (50302899)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 外国人児童生徒 / DLA / ALP / 教科学習 / 対話型アセスメント / 日本語力測定・評価 / JSL評価参照枠 / ステージ |
Research Abstract |
本研究は、文科省の「外国人児童生徒の総合的な学習支援事業」(平成22~24年度)の一環である「学校において利用可能な日本語能力測定方法の開発」(以下、DLA:Dialogue Language Assessment)の研究を、発展的・継続的に行っていく。委託研究では、年少者の日本語教育の課題である「教科学習の授業についていける日本語力(以下、ALP:Academic Language Proficiency )」の測定方法の開発を行った。ALPの習得には長い時間がかかるため、長期の研究計画が必要となる。本科研はその第一段階として、DLAの事例を収集し、DLAの妥当性の検証を行いその精度を高め、学校での更なる普及に貢献すること、また、年少者のALPの伸びの変容を追跡調査することを目指している。初年度の実績は以下の通りである。 1.研究会開催:筑波教員研修センター開催の教職員等中央研修(6/12)・母語・継承語・バイリンガル教育研究会(8/16)・OBC-DRA研究会(9/14)・科研公開研究会開催(9/15) その外、各教育委員会主催のワークショップでの指導助言: 兵庫県教育委員会(6/28)・浜松市(11/30) ・横浜市(1/29)・浜松市、奈良教育大学(2/15 )・ 飯田市(2/28)・大阪府(3/28 ) 2.研究の基盤整備:研究の効率的な循環構築を目指し、TTW(Tester's Training Workshop)を次のような流れで2度に分け実施した。「第1回研修(8/22)→(各現場で実践し、実践報告書、実践状況を映したDVDの提出を課題とした)→第2回研修(11/16)(研修生による実践報告)→(再度、DLA実践、課題提出)→課題を審査し、3月に「受講修了書」送付。これにより、DLAに関し重要なデーターや今後継続的な研究推進のための協力校及び協力者を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.長期研究を見据えた研究の基盤整備:初年度に行われたDLA研究会、TTW、また各教育委員会主催のDLA研修会を通し、DLAに関心のある教育現場との協力関係(浜松市・鈴鹿市教育委員会、大阪・愛知・神奈川の学校の教員)を樹立することができた。これにより、次年度以降、継続的にDLAのデータを得ることができる体制が整備された。 2.事例収集・研究によるDLAの検証:本格的なDLAの事例収集は科研の2年目にずれ込んだ。それは、委託研究の成果である『外国人児童生徒の総合的な支援事業 外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA Dialogic Language Assessment for Japanese as a Second Language』(文部科学省)の冊子等の刊行、及びWeb上への公開が、文科省の事情により1年遅れたことにある。そのため、平成25年度は、冊子の刊行に向けて、再度内容の細かい見直しなどの作業に科研研究の多くの時間が費やされた。「DLAの検証」は、DLAで開発された「JSL評価参照枠」(学齢期の子どもの在籍学級参加と支援の関係を6つのステージに分けて示したもの)のステージ判定の検証を目指すものである。これは、外国人児童生徒の日本語能力のステージを示すとともに、指導へのヒントを得ることのできる重要な資料となるものである。3か年の委託事業でまとめられた「JSL評価参照枠」の精度を上げるためには、多くの事例が必要となる。これは、本科研の中心的な研究となる。 3.児童生徒のALPの伸びの変容の追跡調査:本科研では、DLAを通して児童生徒のALPの伸びの変容の追跡調査を目指している。これは、事例を積み上げ長期的に行われるものである。申請書に記した通り、本科研ではそのパイロットスタディーを行うものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.データ収集・研究:2014年度は、科研の初年度に構築された研究協力者との協働研究を本格的に開始していく。研究協力者には、①教育現場での定期的なDLA実践、②実践報告書作成、③技能に応じて、「映像・文字・音声データ」提供等の協力依頼をする。「DLA話す」「DLA読む」「DLA書く」「DLA聴く」の各技能で、外国人児童生徒の年齢(学年)・来日時期・滞日期間・母語の状況等を鑑み、事例の収集、分析を行い、独自に研究を進め、その成果を論文にまとめていく。それにより「JSL評価参照枠」の記述等の検証を行う。また、同一の児童生徒に対する長期多岐な事例を継続的に収集することにより、児童生徒の伸びの変容の追跡調査の可能性を探る。 2.研究会予定:日本語教育学会春季大会(6/1)「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLAの活用」・日本語教育学会シドニー国際大会(7/9)「外国人児童生徒のためのDLA-JSL評価参照枠の課題と展望ー対話型アプローチの利点と年齢ブロック別対応の必要性に焦点を当ててー 」・科研公開研究会(12月)この研究会では、教育現場と研究者の協働研究をめざし、上記の協力者にも実践の発表をお願いする予定である。 3.DLA研修会での講師:独立行政法人・筑波教員研修センター開催の教職員等中央研修(11/17~12/12)。2014年度より外国人児童生徒に対する日本語指導は「特別な教育課程」に組み込まれることになった。「学習目標例」はDLAのJSL評価参照枠を軸とし6つのステージにそって表示されている。DLAは今後国内の年少者の日本語教育に大きな影響を与えることは必須であり、教育委員会からの要請は今後も増えるものと思われる。DLAの開発チームでもある本科研チームとしては、教育現場との関係を重視しており、それらの要請にこたえていくつもりである
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本科研は文科省の委託研究(2010~2012年度)の成果物「対話型日本語能力アセスメントDLA」の検証を目的としている。しかし、文科省のHPへのDLAの掲載が一年ずれ込み、科研の初年度(2013年度)と重なってしまった。そのため、当初の科研の計画が一部遅れたことによる。 2014年度は、DLAの検証に必要な事例収集を行いその結果を研究会等で発表していく予定である。次年度使用額はその一部に当てる。
|
Research Products
(3 results)