2014 Fiscal Year Research-status Report
「生活者としての外国人」支援のための公共サイン(看板・掲示物)調査研究
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25370587
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
本田 弘之 北陸先端科学技術大学院大学, 先端領域基礎教育院, 教授 (70286433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉林 秀男 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (00407066)
岩田 一成 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (70509067)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公共サイン / 国際共通語としての英語 / 表記の多言語化 / ピクトグラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は地域における「生活者としての外国人」への効果的な日本語支援をおこなうための基礎研究として、日本と海外の公共サインの「あり方」について、その「量」と「質」を調査した。特に本年度は、海外における調査として7月にオーストラリア(シドニー)、2月にドイツ、チェコでの調査をおこない、3000枚以上の写真を撮影した。その結果、つぎのようなことが明らかになった。撮影した写真を比較分析してみると、公共サインの掲示には、発想が異なる3つのパターンがある。それは、①英語で表記するパターン、②多言語化を進めていこうとするパターン、③言語にたよらずピクトグラムを利用するパターンである。 オーストラリアや台湾が①のパターンである。英語圏のオーストラリアが英語表記を利用するのは当然であるが、台湾のようなアジアでも中国語に英語を併記する手法を取っている。すなわち、英語が「国際共通語」であると考える発想である。 日本も多くの公共サインは①であったが、近年4言語スタンダードと呼ばれる、日本語表記にローマ字・ハングル・簡体字を追加した②のパターンの公共サインが広く使われはじめた。 複言語主義を掲げるEU諸国では、少し様相が異なってくる。見る人の母語が何であっても対応できるピクトグラム表示の精緻化である。これが③のパターンである。 英語を利用する①のパターンは一見合理的に見えるが、英語への過信が背景にあり、英語が分からない人には伝達効果が得られない。また、英語話者が圧倒的優位に立つことから言語による人々の情報格差の拡大につながるという問題がある。②パターンのように多言語化を進めていくという配慮は、①パターンの不備を補う意味では非常に重要ではあるが、多言語化には限界がある。すべての言語を表記することができない以上、どの場面で、どの言語を、(なぜ)選択するかという点で、偏見や差別の助長につながりかねない側面ももつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、海外における調査が予定どおり進行しなかったため、当初の計画よりもかなりの遅れがでた。しかし、平成26年度は、その遅れをとりもどすべくオーストラリアとドイツ、チェコで調査をおこない、大量のデータを得ることができた。これには、研究者が調査に習熟し、ポイントを決めて撮影ができるようになったことも大きい。 集積したデータは、現在分析を進めているが、すでに「研究実績の概要」にまとめたような考察結果を得ている。これらの結果は、平成27年度の社会言語学系の学会で発表する予定である。また、Web上にブログを開設し、ここに各研究分担者が、分析結果を書きこんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、最終年度として、これまでに得られた調査研究の分析と考察結果を、学会等で発表する。それと同時に、平成26年度の調査の途上、いままでにないパターンの公共サイン掲示がみられた北欧諸国で調査をおこない、公共サインの掲示パターンをカテゴライズし、真にのぞましい公共サイン掲示のありかたを明らかにしたい。また、ブラジルでおこなわれる国際学会に招待講演者として参加する予定なので、その際にもデータを収集したいと考えている。 それと同時に、いままで得られた豊富な画像をもとに、公共サイン掲示について、提言ができるようなブログを充実させ、公開する。
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Causes of Carryover |
平成25年度、研究初年度のため,主に研究の成果がでてきた段階で必要なセミナー、学会などへの参加旅費で未使用額が生じた。平成26年度は、予定どおり、海外・国内における調査を行ったが、平成25年度の余剰額があったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に延期されていたピクトグラムと動線を組み合わせたサイン掲示の方法について現地調査を実施するための旅費に使用する。また、平成26年度の調査でデジタルカメラなどの調査機材に不具合がでた。修理を試みるが、更新が必要になった場合は、それにも使用する予定である。
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Research Products
(1 results)