2015 Fiscal Year Research-status Report
近世期紀伊半島海民の多様かつ広域的生業形態とその近代的変容
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25370768
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚本 明 三重大学, 人文学部, 教授 (40217279)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海女 / 漁民 / 朝鮮出漁 / 志摩 / 漁村 / 出稼ぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、明治期の朝鮮出漁に関する史料調査を、兵庫県立図書館、神戸市中央図書館、社団法人淡路水交会、大分県立図書館、同文書館、同公文書館などで行った。淡路水交会においては、志摩海女を雇用したことが三重県側の史料で確認できる淡盛商会及びその中心人物である森野正気に関する史料を見出したが、直接の関わりを示すものではなかった。東京海洋大学附属図書館にて大日本水産会報などの雑誌類を検索し、明治期の水産界の全体像を把握することに努めた。また志摩市域で最大規模の史料である越賀区有文書を検討し、海女の朝鮮出漁が地元の村社会に与えた影響について分析した。 これらの調査に基づく研究成果を2015年12月14日の海女研究会で報告し、そこでの議論を受けて「近代志摩海女の朝鮮出漁とその影響」(『三重大史学』16、2016年3月)として公表した。朝鮮出漁の時期変化と濫獲を招いた漁撈と雇用の形態、済州島海女との関係、そして志摩の村落の経済構造が農業や林業など種々の兼業を伴ったあり方から「漁業専業者」が増加し田畑が衰退していく起点になったことを論じた。 7月10日に日韓若者の海女文化交流事業にて「日本の海女の歴史」、8月5日に立命館高等学校SSHで「海女の歴史と文化を科学する」の講義を担当し、11月6日の第6回海女サミットでパネルディスカッション「日韓海女の交流を進めるために」のコーディネーターを務めるなど、海女文化の発信に努めた。また、海の博物館が刊行した写真集『志摩半島の海女』に「志摩半島の海女の歴史」を寄稿した。 直接関係する内容ではないが、志摩地域の調査等の成果と課題や、部落史のなかでの志摩漁村の課題も論じる機会を得た。 志摩地方の古文書類の検討を進め、尾鷲市中央公民館郷土室に残る尾鷲組大庄屋文書の漁業史料と合わせて、来年度に予定している近世海女関係の史料集の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代海女出漁については、この3年間の調査と研究の成果を集約した論考を公表することができた。それに並行して、研究成果の社会還元や、海女文化を通した日韓文化交流事業などは、当初の計画以上に遂行できている。一方で、江戸時代中の海女漁に関する史料の検索については、該当史料の多さもあって、やや難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
明治期の漁業問題に関しては、東京海洋大学附属図書館を中心に補遺的な調査を行ってデータベースの完成を図るが、今年度は江戸時代の海女文化の全体像把握に重点を置く。全国の海女文化が残る地のうち、まだ赴いていない徳島、福井、千葉などで調査を行うと共に、志摩地方に残る史料のうち重要なものを史料集的な形で紹介することを目指す。
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Research Products
(5 results)